投資信託の直販の動きが加速している。
投信直販の流れは徐々に加速してきており、大手では2015年に三井住友アセットマネジメントが直販を始めて以来、各社が追随する流れとなり、インデックスファンドを中心に手数料も競争の動きが出てきた。
元々投信の手数料は非常に高いので、引き下げは投資家にとっては非常にいいことだ。
ファンドマネージャーが銘柄選定に関わるアクティブファンドが手数料が高く、その代りTOPIXなどの指数に連動するインデックスファンドよりも高いパフォーマンスを目指すとされているが、これが上手くいっていないことが多い。
ファンドマネージャーの腕というよりは、元々のコンセプトが悪いものも多い。
逆にインデックスファンドは、指数に連動させることに特化しており、人手もかからないため手数料は安い。
ちょっとした大局観があればこれを上手く活用して、アクティブファンドよりも高いパフォーマンスが上げられるのだが、販売手数料が安いために金融機関は進めることはない。
既に知られているところかと思うが、投資信託は、運用会社ではなく、証券会社、銀行、郵便局などの販売会社で販売されるのが主流だ。
運用会社のマーケティング担当者が、証券会社や銀行などの金融機関に出向き、自社ファンドを取り扱って貰うように営業し、金融機関側はその中から取り扱いファンドを選択している。
当然、自社系列の運用会社のファンドが多くなる。
運用会社は、支店網を持たない為、長年に渡り金融機関に販売を委託してきたが、ネットに親しむ投資家が増えてきたこともあって、対面販売を委託する必要性は落ちてきている。
このまま投信の直販が拡大していった場合、金融業界は大きく変化することが考えられる。
投信の直販拡大で見込まれる変化
・手数料の引き下げ
先にも述べたが、販売会社に委託している分、手数料は高く設定されている。
手数料の内訳として、投資信託買付時に徴収される販売手数料と保有期間中定率で徴収される信託報酬が多くの割合を占める。販売手数料、信託報酬ともに金融機関と運用会社で折半される(丁度半々ではないが)ので、販売会社分がなくなるだけでもコストは随分軽くなる。
また、これらの手数料は、ファンドマネージャー等関係者が多いアクティブファンドが当然高いので、コストに見合う程のものかより慎重に選ばなくてはいけない。
・投信の質の向上
これまで投信会社は、直接顧客にリーチしてこなかった分、ニーズが把握できていない。ネットとはいえ、直接販売することでニーズや傾向が掴める。少ないかも知れないが、直接意見を吸い上げることもできるだろう。
また、直接顧客と接点を持たなかったネット証券がそうであるように、投信会社もちょっとした店舗を出すようになるかもしれない。勿論、沢山出すとコストが嵩むので都市部の真ん中に小さなサロンを数店出す感じだろうか。SBIマネープラザなどのようなイメージか。金融版オムニチャネルみたいな感じ。ネットと同時に対面でもリアルな声を吸い上げ、商品開発にフィードバックする。メガバンク系などは、証券、銀行の共同店舗もあるのでそこに加えるかたちにすればすぐできるだろう。
・販売会社の営業姿勢の変化
運用会社が直接投信を販売するようになることで、販売会社は黙っていても商品が揃う状況ではなくなる。勿論、自社グループのものは揃うだろうが、少なくとも他の運用会社と競い合って売り込んで来なくなる。
そうなると、販売会社はいたずらに新ファンドを売り込んでいればいいという状況ではなくなる。真新しさでアピールできない分、既存ファンドの中から相場や顧客にマッチしたものを提案する方向に力点が置かれるハズ。。
つまり顧客の為に、分析力を発揮することに価値を見出す本来の姿に幾分近づくのではないか。手数料は金融機関の販売手間賃ではなく、アドバイザリーフィーでなくてはならない。心配としては、本部で一元的に注力商品を決めて、機械のように同じセールストークを繰り出すロボットを大量生産する恐れがあることだが、そうした金融機関は時間はかかるが淘汰されるだろう。
・ホールセールでバイサイドの力が強まる
ホールセールはサービスを提供する側である証券会社をセルサイド、サービス提供を受ける顧客側にあたる運用会社をバイサイドという。(このあたり分かりにくいかも知れない。アナリストはいらない? 証券アナリストは消える運命かをご参考頂くとイメージ浮かぶかと)
運用会社側は自分達が顧客とはいえど、投資信託を販売して貰っているというある種の弱みも抱えている。つまり、部門が変われば業者と顧客の関係が逆転する。ファンドマネージャーは証券会社の顧客だが、投信取扱部署は運用会社の顧客なのだ。
この関係があるので、運用会社は投信の大口顧客であったり、大型投信を立ち上げる際にはなんとなく証券会社に頭が上がらないところがあった。勿論、ある程度のお偉いさん達の話しではあるが。
これがなくなることで、運用会社の立場は強くなるだろう。それが、より運用の質を高めることに繋がればいいが、ここはあまり変わらないかもしれない。
と、投信直販が拡大すれば、手数料以外に副次的にも投資家にとって望ましい変化が起きると思っている。
こちらは直販をやっている投資信託委託会社のひとつです。
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