MiFID2がもたらす資産運用業界の変化

金融業界
2018年1月3日から、MiFID2(欧州第二次金融商品市場指令)が適用された。
MiFID2の軸となる内容について、整理してみたい。

リサーチ費用のアンバンドリング

MiFID2導入による焦点は、「リサーチ費用のアンバンドリング」である。

「リサーチ費用のアンバンドリング」とは、何のことを言っているのかというと、機関投資家(運用会社)が証券会社(ブローカー)に支払う(株式)取引手数料の内訳を明らかにして、きっちり分けなさいという指導である。

証券会社は機関投資家に対して、株式の売買執行(トレーディング)は勿論のこと、投資情報やアナリストレポートの提供、面談によるリサーチ提供、株式発行企業との面談設定等々のサービスを行っている。機関投資家はこれらのサービスの質、量を集計し合計点で証券会社をランク付けする。3ヶ月や6ヶ月ことにランキングを出しておりそのたびに証券会社の順位が入れ替わる。そして、ランキングの高い順に注文を多く出している。

つまり取引手数料は、証券会社から受ける全てのサービスに対して支払われている。

全部のサービスを纏めてひとつの手数料とするのではなく、大きくリサーチ費用と売買執行手数料に分けなさいというのがMiFIDⅡの趣旨である。

MiFID2適用後の取引手数料は、執行手数料+リサーチ費用となるので、今まで見えなかったリサーチ費用が浮き彫りになり、これを極力効率化しようとするインセンティブがはたらく。

MiFID2適用による業界変化

運用会社に資金を預ける年金や個人投資家に対して、運用にかかる費用を明確にしなさいというのが狙いであるが、売買執行手数料はやむをえないとしても今まで見えなかったリサーチ提供の費用がはっきりと見えることになると運用を取り巻く世界は変わってくる。

証券会社は、それまで無料(執行手数料に含まれていた)であったリサーチを有料で提供することになり、また適用以前に有料で提供していた欧米金融機関の一部ではシェア獲得を目指すべく価格競争に突入する可能性もある。

運用会社が取引証券会社を選別する動き

リサーチ費用が有料となると、運用会社は費用を抑える為、取引する証券会社を選別する動きが強まる。現状機関投資家は、殆どの証券会社に口座を持っており、信頼度は別にしてほぼ全社のセールスやアナリストとは大体接点があるのだが、MiFIDⅡ適用後は取引証券会社を数社に絞ることが想定される。

リサーチ体制が充実している証券会社に取引を集中することとなり、少数精鋭のハウスに居た著名アナリストもそちらへ移ることになるだろう。ちなみに日本の場合は、日系大手5社が組織が大きく体制が充実している。リーマンショック以降、外資系証券が日本でのビジネスを縮小する中で、有力プレーヤーはほとんど日系5社に集まってきている為、これによる外資系から日系への移籍はそれ程多くはないだろう。

海外の場合は、証券会社間の優勝劣敗の動きが強まり、有力ブローカーがより限られてくる流れになるだろう。

リサーチ専門の会社が注目される

また、証券会社ではなく、リサーチ専門の会社が注目されてくるだろう。

リサーチ専門の会社は金融業界OBが設立した会社も多く、比較的小規模な会社も多いが一本芯が通った拘りを持った会社が多く、特定業界にフォーカスした会社、着眼点がユニークな会社等もあり、彼らがアドバイザーとして台頭してくると運用にもより個性が出てくるのではないだろうか。

証券会社のアナリストの見解は、優劣はあれど基本的には同じものを似たような角度で見るので、似通っていることが多く、一人のアナリストのレポートを見れば事足りてしまう。近い将来AIで代替できる部分も多いだろう。

その点、独自性の強いリサーチ会社のアナリストの見解は、ファンドマネージャーにとっては、時に違和感もあるかも知れないが、知的刺激が強くブレーンストーミングを加速させるのではないだろうか。

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