銀行融資を断られる会社と融資獲得のための手法

経営

銀行から融資を受けられるのと受けられないのとでは、事業運営に甚大な差が出ますし、会社の存続そのものに関わることも少なくありません。

キャッシュ=会社の命の砂時計と言っても過言ではないです。

この記事では、銀行から融資を断られてしまうのはどういう会社なのか、どういう原因があるのかを解説します。

また、もしあなたの会社が、審査に通らない会社であったとしても、どうしたら融資が受けられるようになるのか、他に資金調達方法がないのかもお伝えします。

上場予備群企業の財務責任者として、倒産寸前の状況から融資やあらゆる手段で億円単位を幾度も調達した経験、多種多様な顧問先で新規融資を引き出している経験、都地銀や信金の部店長・マネージャーとの日頃の協業の状況から、リアルな認識を伝えます。

銀行から融資を断られる会社の共通点

赤字解消の目途が立たない

お金の貸し手からすると返済の確実性がなにより大切になります。
小学生にでも分かるかも知れませんが、これが全てといっても言い過ぎではありません。

その為に、赤字が続いている会社であれば、その解消が見えていないと貸出しが難しくなります。
近い将来に黒字化するが、いまこの数ヶ月だけが赤字がお金が回らない、ということをしっかりと素明できないと返済原資が心許ないと考えられてしまいます。

ストレスをしっかりと織り込んだ合理的な計画で、赤字解消を眼前に捉えている必要があります。

また、当たり前ではありますが、いつまでに黒字化するといって、計画を何度も裏切っている会社が一番信頼がありません。

駆け引きはもちろん必要ですが、向こう見ずな気合いでつくった計画が一番最悪です。

現預金の流出が止まらない

会計上の赤字黒字以上に大切なのが、現預金の流出入です。

キャッシュの動きと会計損益はやや異なる動きになります。
厳しい状況の会社であるほど、キャッシュの動きが肝になってきます。

経常収支のマイナスが深いと厳しく、投資収支、財務収支の波以上にここが最も大事になります。

自己資本が薄い

自己資本が薄い会社も当然ながら評価が厳しくなります。
キャッシュが回っていれば、まだマシですが、過小資本の会社については銀行だけでなく、全債権者の腰が引けます。

債務超過になると、まともな戦い方ではどうにもならなくなるので、なんとしても避けたいところです。

担保になるものがない

多少信用がない会社でも担保をつけることができれば、なんとかなるケースは多いです。

動産、不動産、経営者保証など、担保権の設定ができ、債権者にとりっぱぐれの恐怖がなくなれば、貸し出しに向けて随分前向きになります。

経営者保証を取るケースはひと昔前までは中小企業では一般的でしたが、最近は減ってきました。
しかしながら、何も差し出すものがない会社の場合は、オーナー社長の個人財産を担保に入れることで何とかする場合も非常に多いです。

業績のキーになるファクターが弱い

企業それぞれに、ビジネスが軌道に乗るためのキーファクターがあります。

来店客数であったり、販売単価であったり、原価率であったり・・・。

赤字黒字やキャッシュに効いてくる最も大事な要素です。
これを把握するために、色々とヒアリングが入るといっても相違ありません。

キーになる指標の動きがよくないと、ビジネスそのものに不安が大きく、

経営者・オーナーの資質が悪い

プライム上場企業のように株式の保有構造が分散している場合にはそこまで問題になりづらいですが、中小企業、スタートアップ企業などで支配株主=社長となっている場合などは、経営者(オーナー)そのものを評価されることも多いです。

身も蓋もないですが、儲かっていれば、多少横暴なオーナー社長でも問題ありません。
そうではない場合は、一番大きな舵を握っている人物ですから債権者としては当然気になります。

合理的な経営ができて、組織に甚大な歪みを発生させることもなさそうで、コンプライアンス上の問題もないということであれば大丈夫ですが、放漫経営に陥ってしまうような資質に不安のある経営者にはバッテンがつきます。

銀行融資を受けるための準備

会社・ビジネスモデルを分かりやすく伝える

基本的なことなのですが、会社のことをきちんと伝えられていないケースが多いです。
特に新規融資の場合は、とても重要です。

銀行内部で承認を得ていく際に、担当者や担当部の責任者が関係各所に説明をしていきます。
ここで上手く説明できるかどうかで結果も進む速度も全く異なります。
担当者の腕といえばそれまでですが、デキない行員がやってもうまくいくようにインプットしておくべきです。

下手がプレゼンしても理解が促進される明瞭な資料をつくる、印象に残るワードや分かりやすい言い回しでを担当者の頭に刷り込んでおくなど、伝言ゲームがうまく運ぶように想定して準備すべきです。

過去業績の振り返りを明瞭に

会社の大小を問わず、過去の決算書で気になる点はあるものです。

決算書を提出した後で、銀行からも質問がありますが、これは行内で上に上げていくためにヒアリングされているのです。

ややこしい点やその会社ならでは点など、淀みなく伝わっていくように明瞭に整理しておきましょう。
決算書の不合理な点を解決しないと融資プロセスは進んでいきません。

直近期と過去3期分を説明できるようにしておきましょう。

論理的で分かりやすい業績見通しをつくる

将来の業績見通しについても説明が求められます。

進行期の業績見通しや期末期初が近ければ新年度の見通しも必要になってきます。
また、融資の性質や会社のステージによっては将来3ヶ年の業績計画を提出する場合もあります。

何がどうなって、売上、費用が割り出されているか、ファクターごとにできる限り明確に整理ができるようにしておきましょう。

その融資の意味(資金使途)を明確にする

銀行は、何のためのお金なのか、という説明ができないと通りません。

運転資金であれば、なぜその金額がその時期に必要なのか、どういったキャッシュフローサイクル故にそうなるのかという説明が必要です。

設備資金の場合も、その設備導入にいくら必要で、それによってどのように利益が出てきて返済にお金が回っていくのか、という筋が書けていなくてはいけません。

資金使途、返済原資の確認とも言えます。

銀行融資以外の資金調達方法

株式による資金調達

株式による資金調達で当面の資金確保だけでなくて、資本増強が出来ると銀行評価は変わります。

自己資本比率が安全圏レベルに達すると、信用力が全く違ったものになります。
まず、エクイティファイナンスをやって、その後に銀行融資も引っ張るという戦略は有効です。

但し、一般的にエクイティファイナンスのほうが難易度が高く、専門的な知識、アクションも必要にはなります。

会社の支配権の問題にも直接的に関わるので、特にオーナー企業の場合には覚悟が必要です。

少人数私募債の発行

個々の投資家に社債を発行して資金調達する方法もあります。
バランスシート上は、銀行借入と同じく負債となります。

私募の形態となるので、49人以下からの調達となります。
顔が見えている先から調達するケースが多いです。

アセットファイナンス(資産の流動化)

動産、不動産、債権などを流動化して、ファイナンスする手法です。
有形、無形のアセットを保有している場合には、様々な手法が考えられるので金融機関や識者へ相談することをおすすめします。

ファクタリング

売掛債権のファクタリングも短期資金調達の手法のひとつになります。
受取手形を持っている場合には、銀行で割り引いて貰うことも有効ですが、手形商売が少なくなった現在ではファクタリングが使われることも多くなってきました。

今はダメでも近い将来融資を受ける方法

増資による資本増強

エクイティファイナンスによって、資本増強した後に融資にトライすることで全く違った結果も得やすいです。

エクイティを足掛かりにして、デットも引き込んでいく組み立てです。

黒字化ポイントの明確化

債権者側はどこから資金が順回転して、返済原資が確からしいものになるのかが常に気になるところです。

月次ベースで黒字化するポイントを明確にしておき、それに向かって計画通りに進展していることを素明できるようにしきおきましょう。

銀行との信頼関係構築

銀行だけでなく投資家にも言えることですが、理解できないものにカネを出すことはありません。

今すぐ融資が受けられる状況ではなくとも、自社のことを理解してもらい、機が熟せば融資したい会社と思って貰えるように地ならしをしておくことも有効です。

会社のことだけでなく、社長や財務担当役員自身の信頼も武器になります。

銀行間での競争環境をつくる

1行との関係構築に留まらず、複数行と上手く付き合いましょう。

他行もいるので、シェア争いがあるということを印象付けておくべきです。
銀行間でも競争環境があり、先に融資したもの、大きく貸したもの勝ちであると、意識させることで審査を通すインセンティブになります。

リスクがあって、貸出しに二の足を踏む局面であっても、そこで踏み込まなければ他行の後塵を拝すことになると上手にプレッシャーをかけましょう。
但し、これは出来る人と出来ない人が分かれると思います。

銀行融資を断られる会社と融資獲得のための手法まとめ

銀行融資を断られる会社にはパターンがあります。
個々の会社で事情は異なるものの、融資を断られる理由は大別されます。
自社の状況を把握した上で工夫の余地がないか、今は難しくても将来のための種まきができないか等、常に考えていくことで半年後、1年後、3年後の絵姿は大きく変わってきます。

とはいえ、自社で考えるのに限界もあるかと思います。
近くに専門家がいれば相談を持ちかけるといいですが、センスで対応が別れる分野でもあるので、複数に相談ができるとなおよしです。

融資戦略やファイナンス手法全般について、当ブログお問い合わせフォームからもメッセージいただけましたら無料でご相談承ります。
(お受けできる件数に限りがありますので、予めご了承ください。)

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