2018年3月11日発刊の日経ヴェリタスにて、アナリストランキングの結果が発表されました。
総合ランキングは野村證券が5年ぶり首位奪回、各セクター別ではベテランアナリストが上位を占める一方で少しづつ若返っている印象もあります。
翌年以降の記事もありますので、毎年の推移を見比べても面白いです。
参考記事>>>
証券会社別ランキング
証券会社別のランキングは以下の結果となっています。
各アナリストの獲得点数を合計、会社別に集計、ランキングされています。
括弧内は前年順位
1.野村證券(2) 得点:15557 アナリスト数:44
2.みずほ証券(1) 得点:13597 アナリスト数:33
3.大和証券グループ(5) 得点:12774 アナリスト数:41
4.SMBC日興証券(3) 得点:11943 アナリスト数:35
5.三菱UFJモルガン・スタンレー証券(4) 得点:9040 アナリスト数:36
6.JPモルガン証券(6) 得点:4662 アナリスト数:17
7.シティグループ証券(7) 得点:3141 アナリスト数:14
8.UBS証券(9) 得点:2717 アナリスト数:16
9.東海東京調査センター(12) 得点:2364 アナリスト数:19
10.岡三証券(10) 得点:2338 アナリスト数:17
日経ヴェリタスより引用
野村證券が前年まで4年連続首位だったみずほ証券を逆転して5年ぶり首位へ。
セクター別で1位を獲得したアナリスト数は野村、みずほともに9人ですが、ランクインしたアナリスト数は野村が44人と層の厚さで上回っています。
各社別の得点、アナリスト数をよく見て貰えればと思いますが、日系5社に得点、人数とも集中しています。単純に5社が強いと見ることもできますが、要はランキングに本気になっているのが5社くらいということでもあります。
また、ランキング上、各業種別で1位となったアナリストの貢献が大きいですが、全セクターひっくるめた総合ランキングで上位を獲得したアナリストはダブルで得点を稼いでいます。
総合ランキングのトップ5は以下です。敬称略。
【アナリスト総合ランキング】
括弧内は前年順位
1.斎藤克史(3) 野村
2.渡辺英克(1) みずほ
3.村上正雄(2) ドイツ
4.小場啓司(4) 三菱UFJMS
5.山田幹也(19) みずほ
日経ヴェリタスより引用
業種別ランキング①:産業用電子機器~化学・繊維
各セクター別のトップ5を列挙していきます。
順位、氏名、(前年順位)、所属の順です。敬称略。
【産業用電子機器】
1.山崎雅也(1) 野村
2.田中健士(2) みずほ
3.安井健二(5) UBS
4.宮本武郎(4) 三菱UFJMS
5.前川英之(6) クレディスイス
山崎氏(49歳)は8年連続首位。一貫して野村に在籍。
【家電・AV機器】
1.中根康夫(1) みずほ
2.綾川純也(2) 大和
3.桂竜輔(3) SMBC日興
4.岡崎優(5) 野村
5.江沢厚太(6) シティグループ
中根氏(50歳)は3年連続首位。以前はドイツ証券等に所属。
【電子部品】
1.佐渡拓実(1) 大和
2.秋月学(3) 野村
3.内野晃彦(2) 三菱UFJMS
4.後藤文秀(5) みずほ
5.渡辺洋治(4) SMBC日興
佐渡氏(49歳)は10年連続首位。一貫して大和所属。
【自動車】
1.箱守英治(1) 大和
2.桾本将隆(2) 野村
3.岸本章(3) JPモルガン
4.湯沢康太(10) ゴールドマンサックス
5.森脇崇(5) みずほ
箱守氏(43歳)は2年連続首位。一貫して大和所属。
【自動車部品】
1.松本邦裕(1) SMBC日興
2.坂牧史郎(2) 大和
3.坂口大陸(3) みずほ
4.岩井徹(4) 三菱UFJMS
5.山岡久紘(22) 野村
松本氏(52歳)は9年連続首位。以前は山一、UBSなどに所属。
【医薬品・ヘルスケア】
1.山口秀丸(2) シティグループ
2.渡辺英克(1) みずほ
3.橋口和明(4) 大和
4.田中洋(3) みずほ
5.関篤史(6) UBS
山口氏(52歳)が前年2から首位返り咲き。野村、シティに所属。
【トイレタリー・化粧品】
1.佐藤和佳子(1) みずほ
2.広住勝郎(3) 大和
3.角田律子(4) JPモルガン
4.川本久恵(2) UBS
5.河野孝臣(9) 野村
佐藤氏が2年連続首位。以前は住友信託所属。セクターの特徴か女性が多いです。
【化学・繊維】
1.池田篤(1) シティグループ
2.岡崎茂樹(2) 野村
3.山田幹也(3) みずほ
4.竹内忍(4) SMBC日興
5.梅林秀光(9) 大和
池田氏(39歳)が2年連続首位。比較的若いですね。
以上、日経ヴェリタスより引用
業種別ランキング②:ガラス・紙パ~小売り
つづけてセクター別のトップ5を列挙していきます。
順位、氏名、(前年順位)、所属の順です。敬称略。
【ガラス・紙パ・その他素材】
1.河野孝臣(1) 野村
2.桑原明貴子(2) メリルリンチ
3.松田洋(3) みずほ
4.佐藤有(-) SMBC日興
5.平川教嗣(5) 大和
河野氏(43歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。
【鉄鋼・非鉄】
1.松本裕司(1) 野村
2.山口敦(2) SMBC日興
3.黒坂慶樹(3) 三菱UFJMS
4.尾崎慎一郎(6) 大和
5.榎本尚志(4) メリルリンチ
松本氏(46歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。
【精密機械・半導体製造装置】
1.和田木哲哉(1) 野村
2.芝野正紘(2) シティグループ
3.山本義継(5) みずほ
4.中名生正弘(4) ジェフリーズ
5.小宮知希(3) 三菱UFJMS
和田木氏(49歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。
【機械、造船・プラント】
1.斎藤克史(1) 野村
2.田井宏介(2) 大和
3.佐野友彦(5) JPモルガン
4.大平光行(4) 東海東京
5.諌山裕一郎(7) ゴールドマンサックス
斎藤氏(52歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。総合ランキングでも1位ですね。
【食品】
1.佐治広(2) みずほ
2.高木直実(1) SMBC日興
3.藤原悟史(4) 野村
4.守田誠(5) 大和
5.三浦信義(7) シティグループ
佐治氏(50歳)が前年2位から首位。一貫してみずほ所属。
【銀行】
1.高宮健(1) 野村
2.中村真一郎(2) SMBC日興
3.山田能伸(3) ドイツ
4.松野真央樹(4) みずほ
5.高井晃(5) 大和
高宮氏(48歳)が3年連続首位。以前はみずほ、東京銀行などに所属。5位まで前年と全く同じです。
【証券・保険・その他金融】
1.村木正雄(1) ドイツ
2.辻野菜摘(2) JPモルガン
3.大塚亘(3) 野村
4.渡辺和樹(6) 大和
5.丹羽孝一(4) シティグループ
村木氏(41歳)が11年連続首位。以前は大和所属。41歳にして11年連続首位です。
【小売り】
1.小場啓司(1) 三菱UFJMS
2.高橋俊雄(2) みずほ
3.風早隆弘(3) ドイツ
4.金森都(5) SMBC日興
5.並木祥行(7) SMBC日興
小場氏(51歳)が3年連続首位。一貫して三菱所属。
以上、日経ヴェリタスより引用
業種別ランキング③:商社~インターネット・ゲーム
つづけてセクター別のトップ5を3章目列挙していきます。
順位、氏名、(前年順位)、所属の順です。敬称略。
【商社】
1.森本晃(2) SMBC日興
2.成田康浩(3) 野村
3.永野雅幸(4) 三菱UFJMS
4.森和久(5) JPモルガン
5.林明史(1) UBS
森本氏(35歳)が前年2位から首位。以前はモルガンスタンレー所属。若いですね。
【建設】
1.前川健太郎(1) 野村
2.水谷敏也(2) 三菱UFJMS
3.川島宏樹(3) SMBC日興
4.寺岡秀明(5) 大和
5.七沢奈緒子(4) みずほ
前川氏(40歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。
【住宅・不動産】
1.沖野登史彦(3) UBS
2.橋本嘉寛(2) みずほ
3.福島大輔(1) 野村
4.姉川俊幸(5) 三菱UFJMS
5.田沢淳一(-) SMBC日興
沖野氏が前年3位から首位。以前は経営コンサル会社、不動産会社、その後現在のポジション。
【電力・ガス・石油】
1.新家法昌(1) みずほ
2.西川周作(2) 大和
3.松本繁季(3) 野村
4.荻野零児(4) 三菱UFJMS
5.宮崎高志(8) シティグループ
新家氏(40歳)が5年連続首位。一貫してみずほ所属。
【運輸・倉庫】
1.長谷川浩史(2) SMBC日興
2.鈴木克彦(1) みずほ
3.一柳創(4) 大和
4.広兼賢治(3) 野村
5.姫野良太(5) JPモルガン
長谷川氏(29歳)が前年2位から首位。一貫してSMBC日興所属。20代です。
【通信】
1.安藤義夫(3) 大和
2.増野大作(1) 野村
3.菊池悟(4) SMBC日興
4.田中秀明(5) 三菱UFJMS
5.鶴尾充伸(7) シティグループ
安藤氏(55歳)が前年3位から首位。以前は野村、ゴールドマン所属。
【放送・広告】
1.岩佐慎介(1) みずほ
2.長尾佳尚(4) 野村
3.石原太郎(3) 大和
4.前田栄二(2) SMBC日興
5.岸本晃知(5) 岡三
岩佐氏(45歳)が6年連続首位。以前は野村所属。
【インターネット・ゲーム】
1.小山武史(1) みずほ
2.森はるか(2) JPモルガン
3.森田正司(4) 岡三
4.荒木正人(3) 三菱UFJMS
5.山村淳子(5) 野村
小山氏(47歳)が4年連続首位。以前はドイツ証券所属。
以上、日経ヴェリタスより引用
業種別ランキング④:ビジネスソリューション~エコノミスト
つづけてセクター別のトップ5を4章目列挙していきます。
順位、氏名、(前年順位)、所属の順です。敬称略。
【ビジネスソリューション】
1.田中誓(1) 野村
2.菊池悟(2) SMBC日興
3.田中秀明(3) 三菱UFJMS
4.上野真(5) 大和
5.堀雄介(4) みずほ
田中氏(37歳)が2年連続首位。一貫して野村所属。
【レジャー・アミューズメント】
1.山村淳子(2) 野村
2.森田正司(1) 岡三
3.村上宏俊(3) 三菱UFJMS
4.石原太郎(5) 大和
5.小山武史(4) みずほ
山村氏が前年2位から首位。一貫して野村所属。
【中・小型株】
1.渡辺英克(1) みずほ
2.三浦勇介(13) 大和
3.古島次郎(3) 大和
4.長谷川義人(5) 三菱UFJMS
5.新井勝巳(2) 野村
渡辺氏(51歳)が3年連続首位。以前は野村所属。
【REIT】
1.鳥井裕史(1) SMBC日興
2.荒木智浩(2) 野村
3.大村恒平(4) 大和
4.大畠陽介(3) みずほ
5.沢野徳彦(5) 三菱UFJMS
鳥井氏(39歳)が3年連続首位。以前は大和所属。
【ストラテジスト】
1.菊地正俊(1) みずほ
2.阪上亮太(2) JPモルガン
3.圷正嗣(4) SMBC日興
4.宮島秀直(3) パルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ
5.松浦寿雄(7) 野村
菊地氏(55歳)が2年連続首位。以前は大和、メリルリンチ所属。
【市場・制度分析アナリスト】
1.木野内栄治(1) 大和
2.吉野豊(3) SMBC日興
3.宮田直彦(2) 三菱UFJMS
4.鈴木誠一(5) 東海東京
5.三浦豊(4) みずほ
木野内氏(53歳)が15年連続首位。一貫して大和所属。15年連続ですね。
【クオンツ】
1.永吉勇人(2) みずほ
2.村上昭博(3) 野村
3.伊藤桂一(5) SMBC日興
4.古川真(4) 三菱UFJMS
5.鈴木政博(5) 大和
永吉氏(44歳)が前年2位から首位。以前は大和、メリルリンチに所属。
【エコノミスト】
1.佐治信行(1) 三菱UFJMS
2.牧野潤一(2) SMBC日興
3.小林俊介(4) 大和総研
4.李智雄(3) 三菱UFJMS
5.森山昌俊(5) 三菱UFJMS
佐治氏(59歳)が6年連続首位。以前は日興、みずほ所属。
以上、日経ヴェリタスより引用
アナリストランキング総評と業界展望
野村證券が5年ぶりに首位となり、上位は日系証券が占める結果となりました。
日系5証券の注力ぶりがうかがえましたが、暫くはこの傾向が続きそうです。
野村證券の特徴としては、スターは少ないものの生え抜き人材を中心に数多くのアナリストを擁している点です。これは外資系は勿論、日系の他証券とも違う大きな特徴です。
日系の他証券は外資系ほどではないですが、他社から有力アナリストを引き抜くことが多いです。
戦略としては
幅広くポイントを集める野村と違って、一人当たり、より多くのポイントを稼ぐことが必要になります。
野村の立場からみると、他証券のアナリストが外資系に移籍したりするとポイントが移動する分、有利になります。
過去4年間はみずほ証券が1位となっており、これを今回野村が逆転した形ですが、今回は同社や他の日系証券も有力アナリストが複数名外資系に移籍したこともあって人材移動の影響を受けにくい野村に有利な展開となりました。
日経ヴェリタス本文の解説では引き抜き合戦が落ち着いたと書かれていますが、有力どころ数人の移籍の影響もそれなりにあると思われます。
ヴェリタスでは引き抜き合戦が沈静化した要因としては、アナリストの調査費用を明確化する新規制「MiFIDⅡ」の影響があると書かれており、これが業界に影響してくることは間違いないと思いますが、今回に限っていえばこの影響はあまりなかったと思っています。
むしろ過去5年程度がアナリスト、トレーダー、セールスなどの移籍が極端に少なくなっており、2017年はその反動が少し出た感じがしています。
過去数年は外資系が日本でのビジネスを急激に縮小した影響で、引き抜きが減少していましたが、あまりにスリム化させ過ぎたところもあって少し人員を戻したのかと思います。
今後もビジネスを拡大させることはまずないと思うので、引き続き採用は限定的だと思いますが。
今回はこのような背景も影響しての順位変動もありましたが、来年以降のことを考えればやはり順位は固定化が進んでくると思われます。
上述の「MiFIDⅡ」の影響で各社ともリサーチ部門の拡充には慎重な動きにならざるを得ないですし、ヴェリタス記事でも指摘しているように全32業種中24部門で前年と同じアナリストが1位となっています。固定票を持つ大御所が居座る業種がかなり多いですし、その人達の移籍がほぼないとすれば会社別の総合順位は動きづらいでしょうね。
その意味でも今回首位となった野村證券は次年度以降も有利です。
他証券の引き抜きが限定的な中にあって、総合力でリードしているのは大きいです。
彼らは自前での育成が得意なのでランクインする人数も増やせそうですし、仮にアナリスト部門で人員が過剰となれば、引き抜いた(アナリスト専業の)人材とは違い異動で調整してもいいし柔軟な動きが取りやすいです。一人当たりのコストも安く済みますし。
他の日系証券はタレントの引き抜きをやらないとすれば、自前育成で対応したいところですが、時間もかかることなので各社急には大きな変動はないでしょうね。
外資系は本格的に拡充するつもりもないでしょうし、一方でスリム化も終わってるので現状維持でしょうか。ただ、人員を増やしたUBSが外資系の中では1位(総合6位)にはなるとは思います。
参考記事>>>
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