面白い企業戦略・経営計画の特徴。わかりやすくユニークなストーリーが大切

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上場会社の多くは中期経営計画を策定して事業運営にあたります。
 
向こう3年間ないし5年間の進むべき方向性を定め、会社内だけでなく株式市場、世の中に広く公表をします。
 
株価を予想する上でも大変重要な要素です。
 
いわば会社が将来なりたい姿を描いたものですから、その絵が市場から評価されるものであれば株価にも追い風となります。
非常に重要な意味を持つ経営計画ですが、それを見たところでどう評価していいのか中々難しいものです。
 
そこで、経営計画を見る際に、評価すべき着眼点についてまとめてみました。
名著「ストーリーとしての競争戦略」を参考にしています。
 
また、中期経営計画の評価だけでなく、投資銘柄を選ぶ際には常に役立つ考え方になります。

優れた事業戦略は「面白い物語」になっている

素晴らしい経営計画・事業戦略は、誰が見てもワクワクする面白いストーリーが流れています。
 
経営計画というと何やら小難しく思われますが、
まずは、
ワクワクするストーリーが流れているか
それは実現できそうか
 
というシンプルな目で見て貰えればと思います。
 
いくら数字が沢山並んでいたり、専門用語を並べて説得力がありそうにつくられていても、ワクワクしない事業計画はいいものとは言えません。
 
個人投資家説明会も増えてきているので、機会があれば直接プレゼンを聞いて貰うのといいのですが、素晴らしい事業計画は、誰が聞いてもワクワクする、何より話している社長自身が楽しくて仕方ないようなストーリーを語っています。
 
一枚一枚スライドで説明されますが、あたかも静止画ではなく、動画として伝わってくるようなものが本当にいい計画です。
 
企業ホームページからスライドを見て貰っても、慣れてくると感じ取れるはずです。
分かりやすいものほど、 多くの人に未来へのメッセージが強く伝わり、計画の推進力も強くなるのです。童話に例えるならば、桃太郎がいて、犬と猿とキジに吉備団子をあげてまず仲間になって、桃太郎社長が部下の犬、猿、キジの専門能力を存分に活かして、鬼を退治するまでの絵がハッキリしているほどいいのです。

 

そしてそれを桃太郎である社長自身がワクワクしながら、聞いて欲しくてたまらない様子で話しているというのが理想ですね。
計画の中に筋のいいストーリー”が流れているほど、多くの人に魅力が伝わるのです。

筋のいい「物語」は人を動かす

“物語”になっている経営計画は、社員を動かす原動力にもなります。

当たり前ですが、多くの社員に事業戦略を浸透させるためには、まず理解して貰わねばなりません
多くの社員に伝えようと思うと、小難しいことばかりが並んでいても理解できません。
 
個人投資家や世の中の多くの人が分からない計画は、殆どの社員にも分からないのです。
 
聞いている人がよく分かって、ワクワク、ゾクゾクするような事業戦略は、同じように社員も感動するのです。
 
多くの社員が本気になって、同じ方向に向かうと想像を超えるほどのパワーが発揮されます。
実際に仕事をする社員に、一人でも多く火をつけることが大切になり、その意味でも分かりやすくて、面白いストーリーを語ることが大切なのです。
 
ただ理屈が理路整然と並べてあるだけでは、絵に描いた餅になる可能性が高いです。
中期経営計画という名の“物語”が分かりやすい“ストーリー”になっていて、そこに“熱”を感じれば社員は物語の登場人物の一人として動き出します
 
ストーリーに入り込んでいる社員が多いほどその実現は近くなり、ときに社員は家族や友人にそれを語ることもあります。
 
これが社員の人数分だけ伝播していくと、徐々に世の中にその会社の“物語”が伝わり、外堀りもなんとなく埋まってきます。
 
事業戦略は、物語を通じて、社員、関係者を動かしていくことで機能します。

“物語には人を動かす力”があります。

物語が明瞭でワクワクできると感じられるものほど、実現性も高くなりやすいです。

「他社との違い」と「つながり」に着目

物語が流れていることが一番大切になりますが、それを前提として中身のポイントについて触れていきます。

他社との違い”と“つながり”がキーになります。他社との違いを戦略的につくりにいっているかが、差別化要因になります。

 

ネット証券大手の松井証券の例で説明します。
 
同社は松井道夫社長が就任後、他の証券会社が対面営業や商品ラインアップなどの強化を打ち出す中で、それらには目もくれずネットを使って手数料を安くすることに力を注ぎました。
 
これが実を結び、結果的にネット取引の第一人者となり、その後大手がネットを強化しても追随できないポジションを獲得するに至ります。
 
他社と同じ戦略をとっていたのでは、規模に劣る松井証券は劣勢を強いられていたかも知れません。
そこで自社の立ち位置を見極めて、他社とは全く別路線をいったわけです。
規模は小さいが逆に小回りが効くということもあり、他社がやりづらいことに集中的に力を注いだのです。
 
戦略的に違いをつくりにいった結果、優位を確立できる分野を開拓できたのです。
“違いをつくる”部分は料理でいえばレシピにあたります。次に、それを調理する厨房の役割が必要になりますが、これが“つながり”です。

 

“つながり”は、“違いをつくる”ための資質とイメージして貰えればと思います。

現在持っている能力や特性の中から他社との違いを磨いていくことになります。

松井証券の例では、それがインターネットの活用でした。
当時は、インターネットが今ほど普及している時代ではなかったですが、莫大な資金がかかる訳でもありませんでした。
それよりもシステムをつくるノウハウを磨いていくことが必要でしたが、今ほどITシステム競争も激しくなく、集中的に時間を割けば不可能ではなかったのでしょう。
対面営業を捨てて圧倒的な時間を創出した分、これだけでも資質となり得ます。
 
また、“つながり”に関しては、イチロー選手の例も分かりやすいです。イチロー選手の大きな資質は、野手の間を抜く打撃技術、俊足、ずば抜けた選球眼です。

 

これらを活かして、ホームランバッターではなく俊足好打のアベレージヒッターを志向し、独特のスタイルを築きあげてきます。
更に強肩という要素もあり、高校時代は投手でしたが外野手を選択したことも現在のポジショニングをつくる意味で大きなポイントです。その強みを格が違うレベルに磨き上げる為に考えた練習方法や打撃フォーム、ルーティンなども彼を形作る上で欠かせない要素であり、他人が真似できないものです。

 

これが仮に松井選手のようなパワーヒッターを目指していたとすれば現在の姿はないでしょう。

このように目指すべき姿と特性が合致していて、的を射た努力ができることが“つながり”として、“他社との違い”を生み出す厨房の役割となります。

面白い企業戦略・経営計画の特徴まとめ

  • 優れた事業戦略・経営計画には、ワクワクする面白いストーリーが流れている
  • ワクワクする面白いストーリー即ち筋のいい物語は人を動かす力がある。それによって事業戦略の実現性も高まる
  • 「他社との違い」を意識的につくること、それを可能にする資質・取組みである「つながり」が競争優位を確立する
より深く勉強したい方は、「ストーリーとしての競争戦略」を読んでみるといいでしょう。

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