東芝増資後株主の状況。超大規模増資とリスクと隣り合わせの株主構造

株式投資

東芝の大型増資は、その規模と引受先の顔ぶれが大きな話題となった。

増資額は6,000億円規模で、発行済株式数の半分に相当する超大型増資であったこと、引受先が「もの言う株主」を含む投資ファンド中心であったことは驚きを持って受け止められた。

財務リスクの面では急場を凌げる見通しとなったが、背に腹は代えられない状況であったことが改めて示された格好だ。

報道では、増資引受先の一部が取り沙汰されているが、改めて整理してみたい。

増資の引き受け手に海外アクティビストがズラリと並ぶ

まず増資を引受けたのは全て海外籍の60投資家である。
そのほとんどが投資(買収)ファンドやヘッジファンドであり、通常の市場参加者であるアセットマネジメント会社や年金運用の資金でないものが大半を占める。

株式市場でいうところの通常の海外投資家とは別物と考える必要がある。

増資を引き受けた投資ファンドの多くは、アクティビスト活動を行うもの言うヘッジファンドや海外金融機関の投資口と思われる保有で、いずれもどこかで売り抜けや配当で投資を回収することを求められたギラギラした連中なのだ。

その中の一部に、村上ファンド出身者が運営する「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」系のファンドやサードポイント、グリーンライトなど印象の強い「アクティビスト」すなわち「もの言う株主」が含まれており、心配する声が盛り上がっているのだ。
というか、マスコミがここに焦点を当てて、派手に報道をしている。まあ、事実なので特に問題ないが・・・
ちなみにアクティビストについては、「近年のアクティビストファンドの台頭について」の記事もご参考。

一旦、報道が集中している点は置いておいて、増資を引き受けた投資家を纏めた。
下記に、割当株式数の上位10社を並べた。

東芝出資状況

株式会社東芝 臨時報告書より作成。
割当金額は割当株式数×発行価格262.8円にて計算

御覧のように殆どが投資ファンドで、各社ともかなりの金額を出資している。
上位10社合計で、今回増資額の半分を超える。

1位のECMマスター・ファンドは、上述した「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」が運営するファンドであり、事実として村上ファンド系に一番多く割り当てている。
ちなみに同ファンドは、今回は他の投資家もいるので、どう声を出すかは分からないが、自社株買いや増配要求が強いことで知られた存在だ・・・

他にアクティビストとして報道される、サーベラス、グリーンライトなどグローバルな著名投資家は上位10社にランクインする規模ではないがそれぞれ一定規模出資している。

また、各社とも本籍がケイマン諸島となっているところが多いが、詳しい説明は避けるが、投資1件ごとに別法人を設立しており、本籍をタックスヘイブンであるケイマン諸島とすることで利益回収時の税金負担を軽くすることを目的としている。

増資後の大株主の状況

次に、今回の増資後の大株主の状況をお示しする。

東芝出資後大株主

株式会社東芝 臨時報告書より作成

右側のハイライトしている箇所が、増資後の保有状況になるが、
今回増資を引き受けた、ECMマスター・ファンド、ザ・セガンティ・・・、ハンター・パットン・リミテッド、チヌーク・ホールディングス・リミテッド、エリオット・インターナショナル・エルピーの5社が上位株主に顔を出すことになった。

ご想像の通りで上図の下にもズラっと今回の引受先が続く。

株主層ががらりと入れ替わり、普通ではないギラギラした株主に囲まれた状況で経営に当たらなければならない状況となった。

傍から見ると気の毒というか、産業革新機構の出資等々、公的な支援のほうがまだやり易かったような気がしてくる・・・

開示書類を見たところ、ゴールドマン・サックスがこれらの投資家に当たってきたようだが、まあえげつない・・いや失礼、思い切ったことをするなと・・・

他の会社にも言えることだが、危機に陥った会社には投資銀行がこぞって色々な提案を持ってくることが通常で、彼らからするとビジネスチャンスなのだ。
それが大企業となると規模も大きく、その分収益も多額になるので、何かしようと狙う投資銀行が殆どだ。提案は、ノンコア子会社の売却である場合もあれば、財務基盤再建のための増資の場合もあり、あらゆる角度からフルに提案がくるが、しかし今回のような案件になるとは意外だ。

いずれにせよ、急場は凌いだものの、東芝は全く違う会社となった。

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