立会外取引というトレード方法はなんとなくわかる。
しかし、具体的にどんなものだろうか?有利なものだろうか?自分も使えるのか?
そう思ってこのページに辿り着いたのではないでしょうか。
立会外取引を具体的なイメージができるところまで解説します。
- 立会外取引を具体的な売り買いとして理解できる
- 立会外取引の利用されかた
- 立会外取引による株式市場への影響
- 個人投資家も立会外取引を使える
- 個人投資家で立会外取引に興味を持って調べている人
- 法人で株取引を行うにあたって調べている人(財務・経理担当者など)
- 金融業界にいるけどこの分野詳しくない人
に役に立つ内容かと思います。
目次
立会外取引とは
立会外取引とは、通常の株式市場の立会とは別に行われる取引を指します。
通常の市場取引は、9:00~15:00まで市場が動いており、オークション形式で成立していきます。(立会外取引との対比で立会内取引といいます。)
これに対し、立会外取引は時間も市場も異なり、決まった相手との取引になります。
この記事では、少し広い意味で、通常の市場取引(立会内取引)とは別に行われる取引をまとめて紹介します。
立会外取引の市場
立会外取引の市場は二つあります。
厳密な立会外取引(東証の立会外市場で実施されるもの)に限るとひとつですが、包括的に伝えるためにふたつの市場を紹介します。
- ToSTNet取引:東証の立会外取引市場です。Tokyo Stock Exchange Trading Network Systemの頭文字をとってToSTNetとされています。東証管轄のもと、細かくルールが整備されています。
また、取引形態ごとに以下3つに区分されています。
専門のトレーダーの人でもなければ、ほとんどの場合ToSTNet-1、自社株買いの時はToSTNet-3と覚えてもらえば結構です。- ToSTNet-1:単一銘柄取引。午前8時20分~午後5時30分。
- ToSTNet-2:終値取引。午前8時20分~午前8時45分、午前11時30分~午後0時15分、午後3時~午後4時。
- ToSTNet-3:自己株立会外買付取引。午前8時45分。
- OTC取引:店頭取引と呼ばれ相手方との相対取引になります。Over the counterでOTCです。当事者間で条件を定め、取引所のように時間などもありません。証券会社を通じて売買を行います。個人投資家の場合は、あまり利用されないです。
立会外取引の種類
立会外取引で行われている主な取引です。
具体的な方法になるので、立会外取引をこれをやっているんだと理解してください。
- ブロックトレード:まとまった株数を予め決められた株価で売り買いする取引
- 自社株買い:自社株買いに使われます。上場企業は自社株買いの注文を出し、売却分を買い付けます。自社株買いは立会内市場で行う場合と、立会外の場合と両方あります。
また、少し広い意味で立会内以外の売買をまとめると、立会外分売、公募増資や売出しもあります。
オークション市場とは異なり、予め決められた株価で決まった株数の取引ですね。
それと後述しますが、ひとつの証券会社内の市場といえるダークプールもこの記事で紹介しておきたいと思います。
立会外取引はどんな時に使われるか
大口株主の売却
大口株主が上場企業の株式を売却するときに頻繫に使われます。
この場合、立会外市場でブロックトレードを行うことが多いです。
上位10位~20位以内に入るような大株主は、大量の株式を保有しています。
大量の売りを通常のザラバ注文で発注してしまうと、株価を押し下げてしまい、株主は安値で売ってしまうことになりかねません。
そのため大量の株が売りに出る場合は、一旦証券会社が売却全量を買い取り、その株を複数の投資家に転売していきます。
転売先として、機関投資家に売る場合と個人投資家に売る場合があります。
大口株主の代表例は、創業者一族、持合い先企業、銀行、生損保などです。
ToSTNeT-1が使われることが多いです。
自社株買い
上場企業が自社株買いを行うときにも立会外取引が使われます。
上述でも触れましたが、自社株買い用に設けられたToSTNet-3を使います。
自社株買いは、立会内市場で実施する場合と立会外市場で行う場合の2パターンあります。
機関投資家のトレード
機関投資家は普段から頻繫に立会外取引を行います。
機関投資家は、大きなポートフォリオを運用していることから、大量の買い集めや売却が度々にあります。それを全てオークション市場で捌くとなると株価への影響が大きくなったり、売却に長い時間を要したりします。
そのため、証券会社との間で日常的に相対取引での売買も行っています。
証券会社は多くの投資家と付き合いがあるので、Aファンドが売りたい銘柄はBファンドが欲しい銘柄だなとか社内にニーズが集積されています。
そういった情報を複合的に持っているので特定の売りや買いに応じることができます。
証券会社としては、投資家が円滑に売り買いするための(流動性供給)サービスになります。
ということで、機関投資家は日常的に証券会社とブロックトレードで株を交換しています。
機関投資家について知りたい人は、【機関投資家の種類】わかりやすく株のプロの世界を解説を読んでください。
立会外取引による株価へのインパクト
株価への影響を最小限に抑えることが立会外取引のメリットです。
ザラバで売り注文を投げないので、直接的な株価インパクトはありません。
しかしながら、株式市場には想像力があります。
立会外取引の情報が見えることで、株価には間接的な動揺が起こることもしばしばあります。
立会外取引が株価にインパクトを与える経路
ブロックトレードを通じて株価には影響が出てきます。
立会外取引のデータは、他の市場参加者が見ることができます。
外部からは、誰と誰が取引したかまでは分かりませんが、銘柄と株数、約定株価が見られます。
そうするとブロックトレードが行われたと推測がされます。
ブロックトレードが行われたということは、安定的な旧株主から投資家である新株主に株が渡ったということ・・・
「どのくらいの株数動いたかは外部からも分かる。いつか売られるだろうな」・・
「どんな奴に渡ったかは分からない」・・
いつどれだけの売りが出るか分からない不穏感が市場に流れるのです。
小さな規模では無風ですが、ある程度大きなトレードが起こるとマーケットは気にしだしますね。
もちろん株価は複合的な要因で動くので決して株価の全てではないですが、程度の差はあれど、このような懸念が出るものです。
また、自社株買いも株価には影響がありますが、別途会社から開示されることがほとんどなので、立会外取引から憶測を呼ぶということではありません。
立会外取引の情報は見ることができる
立会外取引の情報は外部からみることができます。
確認する方法は2つあります。
ひとつは、QuickやBloombergといった有料株価情報端末で見る方法。
こちらは、ほぼ全取引が見られます。
ただ、個人で端末を入れている人はほとんどいないと思います。
もう一つは、東証ホームページから見ることができます。
ブロックトレードについては、50億円以上の超大口取引情報のみ過去2週間分が閲覧可能です。
こちらの東証ToSTNet取引超大口約定情報で開示されています。
なお、日付を見るとわかりますが、取引から1日遅れて開示されます。
自社株買いについては、過去2週間分が見られます。
こちらの東証自己株式立会外買付取引情報で開示されています。
個人投資家が使える立会外取引
ブロックトレードへの参加
対面証券会社で取引している人であれば、たまに声がかかると思います。
興味があれば、「ブロックトレードはないか」と尋ねてみるといいです。
(ネット証券でもあると思いますが、引受量自体が対面大手が多いです。)
大口株主はブロックトレードで売却をする際に、機関投資家を対象とするか、個人投資家を対象とするかを選びます。
主に国内大手証券5社(野村、大和、みずほ、日興、三菱)で実施されることが多いので、口座を持っていれば案内されることもあると思います。
ブロックトレードの場合は、株価は市場終値よりも1-5%程度ディスカウントで買えます。(銘柄や総売却数量、相場環境で変わります。)
欲しい銘柄であれば、こうした機会に参加してみるのもいいと思います。
但し、同じ銘柄を何度も案内されたり、しつこく売り込まれる場合は買わないほうが賢明です。
売り手が困っている銘柄は、需給上の心配があります。
ダークプール
広い意味での市場外取引ということで紹介します。
正確には、オークション取引だけれども、東証の立会内ではないものです。
すみません・・・なんのこっちゃですよね。
いくつかの証券会社には、ダークプールという自社内の注文を集計したプールがあります。
東証に取り次ぐ前に、自社内注文で売りと買いが出会うものがないかを確認します。
売りまたは買い注文を発注する際に、その時の東証の板よりも有利な注文が台頭していれば約定を取ることができます。
きめ細かい売買ができるので、少し有利になります。
機関投資家の注文に対しては各証券会社はかなり前から対応している手法になります。
ダークプールについて詳しくは、取引所外での株式売買「ダークプール」を解説を見てください。
個人投資家を対象としたものでは、松井証券の立会外クロス取引(ベストマッチ)というものがあります。売買の際に、立会外取引の板も組み合わせながら約定を取っていく手法になります。
機関投資家並みの約定サービスなのでぜひ利用したいところです。
一約定ごとでは少しの差でも積み重なると大きいです。
気になる人はまず無料で口座開設してみましょう。トレードは慎重に、行動はアクティブにが肝心。
以上、立会外取引についてでした。
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