投資信託分配金の仕組みと利益認識。投信は本当に儲かっているのか?

金融商品
投資信託の分配金の仕組みについて解説します。
この記事に辿り着いた人は、投信の分配金が株の配当とは違うことに気付いていると思います。
 
「投信の分配金はどのように出ているのか」
「分配金を受け取っているのに儲かっていないとはどういうことなのか」
「投信は、結局トータルで儲かっているのか」

こうした疑問にお答えし、今持っている投信が本当に儲かっているのか、判断できるようにします。
 

まず投信の分配金の種別を確認する

投資信託の状況をチェックするにあたって、まずは「収益分配金のご案内(支払通知書)」を取り出してください。

運用会社によって「分配金ご案内」であったり、「分配金報告書」なり多少名前が違いますが、葉書で来ているはずです。
ある程度継続的な状況を把握する必要があるので、毎月分配型投信の場合は直近6ヶ月分くらいの葉書を手元に置いてください。
 
分配金の種類を見て貰いたいのですが、「特別分配金」、「分配金(非課税)」と書いてあれば要注意です。
 
月によって違うと思いますが、特別分配金の月が多いほど状況はよくないと考えていただいて結構です。
 
また、この書類が手元にない場合は、「取引残高報告書」を見てください。
直近で取引がない場合は1年に1回のみの郵送になりますが、金融機関に依頼すれば都度取り寄せられます。
気付かないうちに毎月資産が擦り減って取返しがつかなくなることもありますので、すぐにでも確認することをおすすめします。

投信の特別分配金は元本の漏れだし

特別分配金や非課税分配金いうと、何やら得したような響きですが、実はその逆です。

投信の分配金は、利益になった部分にしか課税されません。
特別分配金は、そもそも利益ではないので非課税なのです。

分配金を貰っているのに利益じゃないというと不思議な感じがすると思いますが、

分配型投信の多くは、よほどの状況変化がない限りは毎月決まった分配金を出すことになっており、運用成績が一定に満たない場合に出る分配金特別分配金です。

 

下記は分配金の仕組みを図示したもので、こちら例にとります。

分配金の図

投資信託を基準価額10,000円で買い付けたとして、それが1ヶ月後に10,500円に値上がりしたとします。分配金は1,000円です。

この時、分配前の基準価額10,500円が全手持ち資産となり、ここから分配金を出していきます。

元々の買付価格は10,000円でしたので、基準価額値上がり分の500円は普通分配金となります。
儲けの部分です。そして、分配金のもう500円分は資産を取り崩して出すことになります。
この部分が特別分配金です。

 

全資産の10,500円から1,000円の分配金を出した後、残りの資産は9,500円になります。
この資産の減少については、基準価額の下落として反映して勘定を合わせることになります。
本来の儲け以上に分配金を出すと、基準価額が下がるのです。
 
図中では個別元本という書き方をしていますが、正味の資産が分配金前後でいくらになるかを計算しているものです。
 
特別分配金が出続けている場合は、身が擦り減っている状態です。

投信のトータル損益はいくらなのか

投資信託の仕組みを上述しましたが、トータルの損益について確認したいと思います。

上記の例の場合でいうと、トータルの儲けは+500円になります。

運用損益=現在の基準価額-買付時基準価額+分配金
=9,500円-10,000円+1,000円
=500円

この例では分配金は1ヶ月のみですが、実際には毎月のもの累計しますのでご留意ください。

結局のところ、元々投資した10,000円が10,500円に値上がりした分が儲けになります。

本来シンプルなものなのですが、分配によって少々ややこしくなっています。
言ってしまえば、分配金はプラスにもマイナスにもならないので意味はないのです。
ただ、毎月決まった払い戻しがある仕組みです。
 
しかし、やはり分配型投資信託には問題があるように思います。

分配型投信3つの問題点

分配型投信はややこしさを抜きにすれば悪くないように感じられるかも知れませんが、やはり問題を内包しています。

投信の分配金を配当と勘違いしてしまう

まず、配当と勘違いしてしまうという点です。

投信あるあるですね・・・
上述のように分配金はあくまで払い戻しに過ぎませんが、毎月別途儲けのお金が入ってくるように錯覚してしまいます。
証券会社のお客さんからすると、株の配当金の感覚になってしまいがちです。
ご存じのように株の配当金は株価の値動きとは関係なく、別途受け取れるものであり、払い戻しではありません。
払い戻しを配当と勘違いして、投信の基準価額は下がっているけど、毎月分配が入っているから良いと思って放置されている人が凄く多いです。
さらに、毎月分配金が口座に振り込まれると安定収益源であるように感じられてしまいます。
毎月決まったお金が入ることはやはり中毒性があるのでしょうか。
これで満足してしまい、基準価額も見なくなる人が何人もいます。
金融機関もそう仕向けるような販売をすることが多いように思いますし、分配型投信自体がそれを狙ってつくられたように思えてなりません。

金融機関の担当者でも配当と思いこんでいる人もいましたので(結構多いと思います)、勘違いのまま販売が続けられていると思うと恐ろしいです。

税金面の問題

税金面でも投資家有利とは言い難いです。

これは儲けの部分にあたる普通分配金課税されます。

上述の例でいえば、普通分配金の500円がこれにあたり、税金が約20%かかり、それを差し引いた400円が口座に入ります。

値上がり型投信であれば利益確定で売却しない限り取られない税金が、分配型投信では含み益になっている限り毎月取られるのです。

どのみち将来利益確定で売却しても税金は取られるしいいか、と思われるかも知れませんが、
分配時には含み益の状態で普通分配金として税金が取られ、このファンドが将来値下がりしたとしてトータルマイナスで売却した場合はどうでしょうか?

売却時には損失なので税金は取られませんが、過去分配時にはいわば途中経過がプラスであったときには税金が取られているのです。

トータルで損したのに税金まで取られたという状態です。

また、こうなった人のほとんどは損したことは分かっても、税金まで取られていたことは頭にありません。

普通分配金か特別分配金かと言うのは、その時々にプラスかマイナスかで分かれますが、プラスの時には強制的に税金が持っていかれる仕組みなのです。

運用の非効率性

運用の非効率性も問題です。

分配によって、資産の一部を払い戻すと翌月から運用に回す資産が減ることになります。上記の例では、買付時に10,000円のファンドが10,500円に値上がりし、分配金を1,000円出したので個別元本は9,500円になるので、翌月からはこの9,500円を元手に運用をします。

 

例えば、資産の収益率が仮に月間1%だとすれば95円の収益が出ます。

一方で同様のファンドで分配金を出さない場合、翌月は10,500円を元手に運用することになります。

同じように資産の収益率1%/月間だとすれば105円の収益が出ますよね。

分配金を出すが為に、差額の10円分ロスが出るのです。

元本が成長すればそれだけ次からの収益額も増加し、これを繰り返していくことで雪だるまが膨らむのですが、分配型の場合は痩せた達磨になってしまいます。

いわゆる複利効果です。分配の分だけこれを放棄することになります。

まとめ:投信の仕組みと評価、問題点

  • まずは「収益分配金のご案内」を取り出す。普通分配金、特別分配金の別を確認し、特別分配金が出ている場合は要注意
  • 投信の分配金は元本の払い戻し。特別分配金が出ている場合は、資産規模が削られている状態
  • 投信のトータル損益は、基準価額の評価損益と分配金を合わせて把握する
  • 分配型投資信託の問題点として、配当と勘違いしてしまうこと、税金上のロスが出る場合があること、運用の非効率性が挙げられる
仕組債の仕組みも気になるときはこちら>>>

投資信託についての関連記事>>>
投資信託は分配型偏重から脱却できるか?

コメント

タイトルとURLをコピーしました