【仕組債のからくりとリスク】メリットと有効な活用の仕方。

金融商品

低金利環境が続く中、比較的金利の高い仕組債での運用を考えている人も多いです。

しかし一方で、複雑に感じて敬遠されがちな商品ではないでしょうか。

仕組債は、リスクをコントロールしながら、見合うリターンを得ることができる利便性の高いものでもあります。
 
ちょっと難しそうなイメージで遠ざけてしまっては勿体ないです。
 
その仕組みとリスクをピザに例えながら解説してみたいと思います。

仕組債のからくり。材料は社債とオプション

仕組債のレシピですが、まず、二つの材料を揃えます。
 
ひとつは社債です。
 
トヨタ、パナソニックなど大手企業の普通の社債をイメージして貰えれば結構です。
これがピザの生地になります。
 
もう一つは、オプションです。
 
詳しくはあとで説明しますが、オプションのおかげで高金利が実現できます。
これがピザのトッピングになります。
 
社債(生地)だけだと金利が低いので、その上にオプション(トッピング)をのせることで金利を出します。
 
社債についてはシンプルなので、特に考えることはないです。
デフォルト、ものすごくさっぱりいうと会社が潰れなければ金利と元本が返ってきます。
 
オプションが一般の人には分かりにくい
ここを噛み砕いて説明しますね。
 
仕組債に使われるのは、プットオプションです。
オプションは数種類ありますが、ここではプットオプションだけに絞ります。
 
プットオプションとは「決まった価格で売る権利」です。
 
プットオプションを買った人は、「決まった価格で売る権利」を手に入れます。
 
当然、タダで権利は買えません。お金を払ってオプションを買います。
この権利は人に売って貰うので、相手もいます。タダでは貰えません。
 
権利を買うというとややこしいですが簡単に理解するために、
ディズニーランドのファストパスをイメージしてください。ファストパスはタダだけど、これをお金を出して買うとイメージしてください。
 
人気アトラクションやショーは高くて、不人気アトラクション、ショーは安いです。
そして、季節やその日の天気などによっても人気度合いは違います。
 
オプションも同じように何かができる権利です。
 
この「決まった価格で売る権利」ですが、
例えばA社株を1,000円で売る権利を買ったとします。その後、株価が900円になったとします。
 
その時、この1,000円で売る権利を使うとどうなるか。
 
株式市場で900円で買ってきて、1,000円で売る権利を使って、相手に1,000円で買い取らせればいい。
 
そうすると100円儲かります。
 
株価が800円なら200円儲け、700円なら300円儲け、つまりは株価が下げるほどに儲かる権利なのです。
 
逆に株価が上昇した場合は、どうなるか。
 
1,000円で売る権利を持っていて、株価が1,100円になったとします。
この時、株式市場で1,100円で買ってきて、1,000円で相手に買い取らせる人はいませんよね。
なので、売る権利は使いません。1,200円になっても1,300円になっても同じように権利は使いません。
 
つまり株価が上がった場合は、儲かりません。
 
それと、思い出してください。この権利をお金を出して買いましたよね。
お金払って買った権利を使わなかったけど、払ったお金は返ってきません
 
ファストパスを買って、アトラクションに乗ってない。だけど、払い戻しはない
そんな状態です。
 
これが「決まった価格で売る権利」すなわち「プットオプション」です。
 
そして仕組債をつくる時には、自分がこの「プットオプションを売る側」になるんです。
あなたが、ディズニーランドの側です。
 
相手からお金を貰って、権利を売ってあげます。
先ほどの例でいうと、株価が1,000円から900円に下がった時には、相手は1,000円で買い取ってくれといってきます。
渋々それに従って、1,000円で買い取らなくてはいけません。
 
そして、それを株式市場で900円で売ったら、100円損しますよね。
株価が安くなればなるほど、損します。
 
逆に株価が上がったらどうなるか。
 
相手は株価が1,100円のときには、1,000円で買い取らせる権利を使いませんよね。
よって、株価が上がった場合には損することはありません
 
そして、権利を売ってあげる時にお金を貰ったことを思い出してください。
これが儲けとして残ります。
 
この権利を売ってあげた料金の儲けが仕組債の金利になるんです。
 
そして、権利を売ってあげる料金は、「いくらの価格で売る権利」かによって変わります。
高い価格で売れる権利のほうが当然料金は高くて安い価格で売れる権利料金が安いです。
 
少し長くなりましたが、これがオプションです。ピザのトッピングです。
 
「いくらの価格で売る権利」を設定するかで、金利が変わり、リスクも変わるんです。
ここがトッピングの味の濃さにあたります。
 
濃い味が好きな人は、リスクをとって「高い価格で売る権利」を設定して、金利を沢山受け取ればいい。
 
薄めの味が好きな人は逆ですね。
この味付けをその時々によって変えていくんです。
いつも濃い味だと病気になっちゃいますし、あんまり薄味でも美味しくないですし、そこが料理人の腕の見せどころです。
 
少し長くなりましたが、仕組債はオプションというトッピングで味が変わるピザです。

仕組債のリスク。ノックインのしくみ

つづいて、仕組債のリスクについてです。
 
仕組債で損失が出るとき、それは株価が下がった時です。
 
仕組債の例として、株価が1,000円以上で推移していれば損失はでない。
逆に700円以下になると、下がった分だけ損する。
というものがあって、これがポイントの700円まで下がった時、ノックインしたといいます。
 
なぜこうなるんでしょうか。
勘の良い人は上述の説明でお分かりかも知れませんね。
 
この場合、「700円で売る権利」がトッピングされています。
オプションを売ってあげた相手は、株価が700円よりも安くなれば700円で売れる権利を行使しますよね。
そして、株価が下がれば下がるほど、相手は儲けて自分はその分損します。
 
オプションがこうした仕組みで機能しているため、一定以上に株価が下がれば損が出るのです。
 
いくらで売る権利」をトッピングしたかによって、ノックインの水準も決まるのです。
 
今の株価が1,000円だとして、「900円で売る権利」を設定すれば金利は沢山貰えますが、それだけノックインするリスクも高いです。
逆に「500円で売る権利」を設定すれば、金利は少ないですが、ノックインするリスクも低いです。
 
そして、これはどの銘柄でオプションを設定するか、株価が荒れ模様の時なのか、静かな時なのかによっても有利、不利は変わってきます。
 
また、相手がいることですから、金利のもとであるオプション料も変わってきます。
 
ディズニーランドのファストパスだとしてもこれは同じことです。
人気のアトラクションでも雨の日だと行きたい人は減りますよね。
逆につまらないアトラクションでも雨宿り代わりに人気になったりするでしょう。
 
金融市場も同じように日々、動いているわけです。
ここを認識しながら、リスクリターンのバランスを考えて仕組債をつくっていくわけです。
 
毎日、同じピザを同じように焼けばいいってものでもないです。

仕組債は証券会社が儲かる?

仕組債は業者が儲けてるんじゃないか?
よくある疑問です。
 
答えとしては、業者はある程度儲けています。
 
仕組債をつくるのは海外金融機関が多いです。
この海外金融機関は、はじめにオプションの説明をしたところでいうと相手方になります。
オプションを買う人ですね。
 
この人の立場で考えると、株価が「決まった価格」以上に下がれば儲かります。
逆にそこまで下がらないとオプション料を損するだけです。
 
同じようにリスクをとっているのか?
そうではないです。
「決まった価格」まで下がらない時でも損しないようにヘッジしています。
ヘッジ手法の説明をすることが目的ではないので、ややこしくならないようさっぱりといいますと、
また別のところで別のオプションを組んでいたり、先物を利用したりして、株価動向に関わらず、トータルで損しないようにしています。
 
「決まった価格」以上に下がった場合でも、それが全部儲けになる訳ではなくて、その分で少し割高なヘッジポジションを買ったりもして、値動きのリスクを消しにいきます。
 
逆にいうと、下がった場合の儲けも凄く少ないかゼロかくらいのイメージです。
ですが、金融機関は自分のリスクでお金を稼がないのでそれでいいのです。
 
相手の側は、株価に対しては常にニュートラルなポジションをとっています。
ただ、それでは収益がないので、オプション料を少し調整して利益を残しています。
この人達がここで抜かなければ、もっと金利が高くなりますが、これがお代ですね。
 
これは何円ですという感じでは、仕組債を購入する側には見えなくなっています。
また、証券会社で仕組債を購入する人が多いと思いますが、彼らがつくっている訳ではないとすると証券会社の収入はどこからでるのでしょう。
 
これも同じで、海外金融機関がオプション料を少し調整した部分の一部から出ています。
海外金融機関は日本の個人投資家に自分達で売るのは大変なので、日本の証券会社に利益の一部を渡して販売してもらっているのです。
 
業者は仕組債というピザをつくるだけで、不味く焼きあがった場合でも損はしません。
ピザ代にしっかり利益を乗せたうえで売ってるわけです。
株や投信にように、手数料として別口で取らないのは、それが既に含まれているからです。

仕組債のメリットと有効な使い方

結局のところ、仕組債の判断基準はシンプルです。
 
「決まった価格」まで株価が下がるか否か、この判断に尽きます。
 
株式投資に比べると随分難易度が下がります。
「決まった価格」まで下がるか否か。
例えば、1年間で現状から30%、50%下落するかしないか。
ここだけを考えればいい訳です。
 
その意味で仕組債投資にはある程度の相場観が求められますが、逆にいえばある程度だけでいいのです。
もちろんその分、普通社債より金利が高いとはいえ、株式よりは儲かりません。
 
ですが、一定程度の金利収入を目的として、ある程度の相場観で判断ができるとすれば、かなり取組みやすい商品にもなってくるわけです。
仕組債最大限有効に活用するには、条件をカスタマイズできる私募タイプの仕組債を利用することです。
 
私募タイプの仕組債は、自分で一定以上の資金が出せれば、自分で条件をカスタマイズできます。
金利はもう少し低くていいので、その分、ノックイン価格を下げて欲しいだとか。
対象銘柄や指数を指定したりだとか、条件を調整できます。
 
自信の持てる条件にカスタマイズできるのです。
 
どのくらいの資金規模からこれが出来るかは証券会社によりますが、ある程度のゆとりのある人にとってそれほど大きな金額ではないです。
 
私募ともうひとつ公募タイプの仕組債がありますが、これは一律の条件で幅広く販売されるものであって、カスタマイズはできません。その分、少ない資金規模から購入可能です。
 
自分が満足、自信の持てる条件でこれがあれば購入してもいいと思いますが、やはり自身の持てる条件に近づけるに越したことはありません。

仕組債のからくりとリスクまとめ

  • 仕組債は社債というピザ生地とオプションというトッピングでできている
  • オプションは「決まった価格で売る権利」であるプットオプションを利用。このプットオプションを売ってあげる代わりに貰うオプション料が金利のもとになっている
  • 仕組債は一定水準以上まで株価が下がると損になるが、これはプットオプションで「決まった価格」がもとになっていることが理由
  • 仕組債は材料であるプットオプションの「決まった価格」を操作することによってリスクリターンが変わる
  • 仕組債投資の判断基準はシンプル。「決まった価格」まで株価が下がるか否かの判断ができればいい。
  • 仕組債を最大限有効に活用するためには、オリジナルにカスタマイズできる私募タイプを利用する
以上、仕組債のしくみについてでした。
自信が持てる条件を組み合わせれば、とても利便性の高い金融商品です。
 
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