株式投資を行ううえで絶対におさえておきたいモノサシにコンセンサスというものがあります。
株式投資の基本的な指標だと、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、配当利回り等が挙げられますが、これらと並んで非常に重要なものになります。
コンセンサスを把握せずして株価の上げ下げは理解できません。
それにも関わらず、
もう何年も株をやっているがそんなものは知らん。
という人も意外と多く、個人投資家に広く浸透しているとは言い難いです。
大変重要なものですので、投資初心者も慣れている方も是非理解しておいてください。
目次
コンセンサスとは何か
コンセンサスとは、全体の意見・見解、目線、期待値を表します。
一般的には、ビジネスマンに親しまれた言葉です。
株の世界での意味合いと似ていますが、少し違うところもあり、対比して紹介します。
ビジネスシーンで使われる「コンセンサス」
主にビジネスで使われる「コンセンサス(consensus)」とは、「全員または複数人の意見が一致している」という意味になります。
ビジネスシーンでは、しばしばある事柄・案件について、チームメンバーで話し合い大方の意見が一致している状況でなければ仕事を進めることが難しかったりします。
こうした時に、チーム内あるいは関係部署間で「コンセンサスを取る」と表現したりします。
また、取引先に提案している案件について進捗を尋ねた時に「まだ社内でコンセンサスが取れていないので待って欲しい」などと言われたりします。
コンセンサスとは、全体で確認・合意された方向性というような意味合いで使います。
株式投資で使われる「コンセンサス」
株の世界での「コンセンサス」は、株式市場全体の期待値です。
株式投資では「コンセンサス」というと具体的な数字を意味します。
例えば、「A銘柄の今期の営業利益は○○億円がコンセンサス」と表現されます。
この○○億円というのは、A銘柄をカバレッジする証券アナリストの業績予想の平均値を使うことが一般的です。
A銘柄をカバレッジしている証券アナリストが5人いたとすると、それぞれがA銘柄の業績の予想を出しています。
勿論それぞれ違う数字を予想しますが、これらを平均したものがコンセンサスです。
A銘柄を強気で評価するアナリストもいれば、弱気でみている人もいます。
それを均すと、平均的な見方になり、株式市場全体が期待・そうなるだろうと読んでいる目線になります。
細かくいうともう少し説明が要りますが、これだけおさえておけばコンセンサスは使えます。
一点だけ「平均」と書きましたので一言添えますが、カバレッジするアナリストの人数が多いほど、コンセンサスの確からしさは高まります。
各銘柄ごとにその会社でも業績予想を公表していますが、それには会社毎にクセがありますし、実態よりも慎重な計画を公表することが多いです。
それに対して証券アナリストは、実態の数字を当てにいこうとしますので、こちらのほうが着地見込として近くなることが一般的です。
また、もうひとつ「コンセンサス」という言葉の使い方があります。
上記の数字の「コンセンサス」の意味をもう少し感覚的に捉えたものになります。
誰もがこの株は上がると思っている銘柄、逆にこの株は下がると思っている銘柄があります。
殆どのアナリストのレーティングが「買い」、逆に「売り」となっているような銘柄です。
違う人が見ても意見が揃っているような銘柄です。
こうした時に、「A銘柄は買いがコンセンサス」、「B銘柄は売りがコンセンサス」と言ったりします。
売り買いだけでなく、政策の追い風が強いのでこのセクターは成長が続くという見方がコンセンサスという使い方もあります。
ビジネスシーンでの使い方と似てきますね。
日本語で言うならば、「衆目の一致するところ」とでもなりましょうか。
なぜコンセンサスを確認することが必要なのか
株式投資は美人投票です。
皆が美人だと思う女性に先に投票するゲームです。
それぞれの好みの差を排して、どの程度の美人度なのか市場参加者共通の「コンセンサス」というモノサシがあるのです。
これを把握しておかなければ、ズレた投票をしてしまうことになります。
株式市場全体の目線を確認する
あなたが良いと思う銘柄があったとして、その株価がもっと上がるのかを考えます。
その為には、まず今の株価が何をもってプライシングされているかを確認する必要があります。
株価形成を正確に把握することはどんな名人でも至難の業ですが、少なくとも市場全体がどれくらいの業績を期待しているのかコンセンサスを目で見て確認することができます。
株価を決めるのは何を置いてもやはり業績(予想)です。
説明のために敢えてシンプル過ぎる言い方をすれば、コンセンサスの数字を超えれば株価は上がり、コンセンサスに届かなければ株価は下がります。
コンセンサスが営業利益100億円であれば、市場はそれをベースに株価形成をしています。
ここで営業利益200億円に上方修正されたとすれば、単純に考えると倍の株価が見えてきます。
コンセンサスは「バー」だとか「ハードル」に例えられることが多いです。
そこを超えられるかどうかが株価の試金石です。
どうなれば株価が上がるのか(下がるのか)狙いを持って投資する
少し発展的に考えます。やや上級編になるので、初心者の方は読み飛ばして貰っても結構です。
コンセンサス(の数字)が形成されている背景を考えましょう。
コンセンサスが前年、前々年の実績並みであれば成長は期待されていないでしょうし、前年からジャンプアップしていれば特需があるのかも知れませんし、政策の追い風があるのかも知れません。
増益、減益予想の背景を調べてみましょう。
言い換えれば、どんな材料が織り込まれて株価が形成されているかを想定するのです。
その上で、どうなれば(何が起これば)大きな成長が期待されるようになるのか、或いは期待外れが露呈するのか、考えてみましょう。
その材料が発現した時に、市場の期待値すなわちコンセンサスが変化し株価の居所がシフトします。
(念の為、アナリストの予想は人間が行う作業なので更新にタイムラグがあり、目に見えるコンセンサスはすぐに変化しませんが、実態的な期待値が変化します。後からアナリストの予想見直しが完了し目に見えるコンセンサスが更新されます。)
皆が何を考えてその銘柄を評価し、意見の集合体として現在の株価が付けられているのか。
株価の現在位置を出来る限り正確に把握し、その上で半歩先を行く予想を持って投資を行うのです。
まさに知的格闘技と言えますし、考えを投資行動に移すには勇気も要りますね。
突き詰めると、「皆の意見を把握した上で、自分の意見を持つ」という人間的な強さまでも試されるように思えます。
コンセンサスはどこで見るのか
コンセンサスを見る方法について紹介します。
株価専用端末で確認する
株価専用端末で確認する方法です。
- Bloomberg
- Quick
- ロイター
などの有料端末を契約していれば、ここで閲覧することができます。
証券会社が契約している株価情報ベンダーになりますが、かなり力を入れて株をやる人であれば個人で契約するのも悪くないでしょう。
但し、月額料金で結構高いので注意が必要ですが。
一般サイトで確認する
無料サイトでも見ることができます。
「IFIS株予報」を見るのがひとつおすすめです。左記リンクは例としてトヨタ自動車のページです。
他にもあるかも知れませんので、見やすいサイトを探してみるのもいいでしょう。
また、何度も言いますが、目に見えるコンセンサスはアナリスト予想の平均です。
アナリストがカバレッジしていない銘柄はコンセンサスが存在しないことになります。
(アナリストカバレッジは中大型株に集中するので、そうした銘柄のほうが多いです。)
その時に、代替できるのが会社四季報の予想です。
各銘柄のページに予想が掲載されているので、参考にしましょう。
コンセンサスが確り形成されている大型株についても四季報予想と対比してもいいでしょう。
コンセンサスはいつチェックするのか
コンセンサスはいつチェックするのか。
ときおり確認しておいて欲しいところですが、四半期決算発表の時に確認するのはマストです。
決算発表前に、コンセンサスの数字をチェックしておいてから発表数字と比べてください。
発表数字がコンセンサスを超えているのか、下回っているのか。
それを頭に入れた上で、株価を見て反応を確かめてください。
実際の株式市場ではシンプルなパターンだけでなく、発表数字がコンセンサスを超えているのに株価が下がっている場合もありますし、その理由を調べていきましょう。
これの繰り返しです。
地道ですが、コツコツやっていけば上手くなるのは株式投資も例外ではありません。
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