アクティビストの活動が広く知れ渡るようになってきました。
日本では村上ファンドが一般的にも有名かと思いますが、その他にも日本市場を得意とするアクティビストファンドがニュースにのぼることが増えてきました。
その一方で、本家ともいうべきアメリカのアクティビストは、知らない人が多いでしょう。
世界的に著名なアクティビストファンドを紹介します。
>日本市場で存在感が大きいアクティビストはこちらの記事で紹介しています。
「日本市場の主要アクティビストファンドと投資先企業一覧。」
>アクティビストに狙われやすい企業の特徴はこちら。
「アクティビストに狙われる会社の特徴と対策」
目次
世界的有名アクティビストファンド
サード・ポイント
最も有名なアクティビストファンド。日本でも比較的よく知られています。
各国を代表する大企業に対しても積極的に要求を行い、委任状争奪戦も辞さないスタンスです。
資金力豊富で時価総額が大きい企業でも躊躇なく株を買い集められ、物言いも鋭く派手なアクティビスト。
概要
- Third Point, LLC
- 1995年設立、ニューヨーク本拠
- 代表 Daniel Loeb(ダニエル ローブ)
主な投資事例
- ネスレ(スイス、食品・飲料)
- 2017~2018年にかけてアクション
- 自社株買い実施、ノンコア事業の売却、保有していた化粧品大手ロレアルの株式売価客などを要求
- ハネウェル(アメリカ、電子制御システム・自動化機器)
- 2017年~2018年にかけてアクション
- 航空宇宙部門の切り離しを要求
- セブン&アイ・ホールディングス(日本、流通)
- 2015年~2016年にかけてアクション
- 苦境にあるイトーヨーカドー、そごう西武などの改革、株主還元拡大を要求
- セブン&アイHDは、当時の鈴木敏文会長の後任として次男鈴木康弘氏をトップに据える方針であったが、これにサード・ポイントが反対。井坂隆一氏がトップに就任した
トライアン・ファンド・マネジメント
経営者との対話を好む傾向。
短期ではなく長期的な企業価値向上に重きをおいた提案を是としている模様。
概要
- Trian Fund Management,L.P.
- 2005年設立、ニューヨーク本拠
- 代表 Nelson Peltz(ネルソン ペルツ)
主な投資事例
- プロクター・アンド・ギャンブル(アメリカ、一般消費財)
- 2017年にアクション
- トライアン代表のペルツ氏の取締役就任を要求。委任状争奪戦に発展。結果的に取締役就任が実現した。
- ゼネラル・エレクトリック(アメリカ、電気事業をルーツとする多事業運営(コングロマリット))
- 2015~2017年にかけてアクション
- 業績不振を理由にCEOの辞任、資産売却、コスト削減強化を要求
- デュポン(アメリカ、化学)
- 2013年~2015年にかけてアクション
- トライアン代表のペルツ氏ら4人の取締役就任を要求。委任状争奪戦に発展
パーシング・スクエア
代表のビル・アックマン氏は1995年にロックフェラーセンターへの入札参加や有名投資家カール・アイカーン氏との確執などで世間を騒がせた人物。
アクティビスト活動のみならず、ヘッジファンドとしても活発で通常の市場売買にも積極的
概要
- Persing Square Capital Management, L.P.
- 2004年設立、ニューヨーク本拠
代表 William Albert Ackman(ウィリアム アルバート アックマン)
主な投資事例
- オートマチック・データ・プロセッシング(アメリカ、給与計算アウトソーシング)
- 2017年にアクション
- 投資家にはADP雇用統計で馴染みの深い会社
- 代表のアックマン氏を含む3名の取締役就任を要求
- 業務に改善案ついて言及
- バリアント・ファーマシューティカルズ(カナダ、製薬)
- 2015年~2017年にかけてアクション
- パーシング・スクエアが選んだ3名の社外取締役就任を要求
- モンデリーズ・インターナショナル(アメリカ、食品・飲料)
- 2015年~2016年にかけてアクション
- コスト削減ないしは、クラフト・ハインツへの会社売却を要求
グリーンライト・キャピタル
アクティビスト活動だけでなく、ヘッジファンドとしての運用にも積極的。
リーマンブラザーズ倒産の際に、空売りで利益をあげたことでも有名
概要
- Greenlight Capital,Inc.
- 1996年設立、ニューヨーク本拠
- 代表 David Einhorn(デービッド アインホーン)
主な投資事例
- ゼネラルモーターズ(アメリカ、自動車)
- 2016年~2017年にかけてアクション
- 株式を2種類に分割することを提案。外部から3名の取締役就任を要求
- アップル(アメリカ、デジタル製品)
- 2013年~2017年にかけてアクション
- 株主還元強化を要求。配当の高い無期限優先株式の発行を求める
バリューアクト・キャピタル
会社側との対話・エンゲージメントを重視する。
代表のジェフリー アッベン氏はフィデリティ・インベストメンツにてファンドマネージャーを務め顕著な実績を残した。父親も資産運用業界の著名人Tim Ubben氏
概要
- ValueAct Capital Management,L.P.
- 2000年設立、サンフランシスコ本拠
- 代表 Jeffery Ubben(ジェフリー アッベン)
主な投資事例
- ロールス・ロイス(イギリス、航空用エンジン製造)
- 2015年~2016年にかけてアクション
- 船舶向けエンジン事業の売却を要求
- バリューアクトが指定する取締役を派遣
- マイクロソフト(アメリカ、ソフトウェア)
- 2013年~2017年にかけてアクション
- バリューアクトが指定する取締役の就任を要求
アイカーン・アソシエイツ
著名投資家カール・アイカーン氏が率いる有力アクティビストファンド。
圧力の強いアクティビストとして知られており、大量の株式取得で発言権を強め、委任状争奪戦、訴訟を使うことも少なくない。
概要
- Icahn Associates, LLC
- 1985年設立、ニューヨーク本拠
- 代表 Carl Icahn(カール アイカーン)
主な投資事例
- ゼロックス(アメリカ、印刷機器)
- 2015年~2018年にかけてアクション
- アイカーン側が指名する3名の取締役就任、一部事業の分離を要求
- 富士フイルムとのプリンター事業の合弁契約解消を要求。これは日本でも大きく報道された
- アップル(アメリカ、デジタル製品)
- 2013年~2016年にかけてアクション
- 自社株買いの拡大を複数回にわたり要求
世界的アクティビストファンドの特徴
世界的で規模の大きいアクティビストファンドの特徴は、端的に下記3点がいえます。
- 大胆
- 比較的短期間でのアクション
- 売り抜けも早い
大企業をターゲットに世間的にも大きく注目を集めるダイナミックな要求を突きつけることがしばしばです。
また、それらのアクションはだらだらと何年もやるというよりは、ポイントを絞って短期間に集中させてきます。
アクティビストファンドの最終目的は、ターゲット企業に言うことを聞かせることではなく、あくまで株で儲けることです。
そのために、世間の耳目を集める株主提案を公開する形で出し、メディアにも煽らせることで株価をグッと吊り上げます。
ある程度、利益が乗ったら売却も早いです。
インパクトは強烈ですが、いつの間にかさっと儲けて消えていくという感じでしょうか。
派手であると同時に売り抜けも上手い。
大衆に鮮烈なドラマを見せておいて、株価上昇でしっかり儲ける名演出家ですね。
日本企業をターゲットにした仕掛けももっと増えてくると思います。
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