株主優待は日本独自の制度である。
諸外国と異なり、日本企業は株主層獲得の手段として優待を用いることも多い。
野村インベスターリレーションズによれば、2016年11月末時点で優待制度導入企業は1,348社に上り、全上場企業の34%にあたる。優待制度を導入する銘柄は年々増加し、この時点で過去最高の企業数のようだ。
上場企業からすれば、株価上昇もしくは下支え効果を期待してのものであるが、本当に効果があるのか検証してみたい。
株主優待は株価へプラスにはたらく
結論としては、株主優待は株価にプラスに効くようだ。
論文「株主優待がもたらす独自効果」によると、株主優待の廃止と増配を同時に発表した銘柄では、発表時に株価リターンがマイナスになることが観測され、廃止される優待利回り以上にマイナスになっているようだ。
(2005年3月~2016年3月に優待発表と増配を同時発表した企業のうち、分析可能な36銘柄のデータ)
投資家は増配を評価するよりも減配を嫌気したということになり、優待には配当以上に株価を支える効果があるということになる。
理屈上は、優待よりも配当のほうが金銭価値が高い為、優待廃止と増配が同時に発表された場合、投資家にはプラスになるハズだ。
例えば換金性の高い航空会社等の株主優待券を例にとると、優待券を金券ショップで換金した場合、大体額面の70%-80%程度の金額になると思われる。
一方、これを配当金として受け取れば、額面通りの金額が受け取れる。税金20%を考慮しても換金価格の変動や手間を考えれば、配当として受け取ったほうが金額は多くなるはずだ。
また、優待は配当と違い、一定以上の株数になるとそれ以上は優待が貰えないので大口株主や機関投資家には効率が悪い。
特に機関投資家の場合は、優待を配当に変えることを望んでいる場合がほとんどだ。
計算上、株主にとって配当と比べて割のいい制度ではないにも関わらず、優待が効力を発揮していることは興味深いデータだ。
優待が効力を発揮している理由としては、「ギフト効果」が考えられている。
これは株主が優待を受け取ったときに、金銭価値以上の満足を得ているということだ。
同額を受け取るならば現金配当よりもギフトで貰ったほうが満足度が高くなるということになるのだが(カネよりモノを貰ったほうが嬉しい)、こんなところにも日本人の気質が現れているのだろうか。
株主優待の特性から投資戦略を考えてみる
上記の優待効果を投資戦略に応用できないか考えてみたい。
結論として、中小型で株主優待のプラス効果が高まってくる銘柄を狙いたい。
まず、株主優待の株価へのプラス効果がより強く出るのは、個人投資家に人気の銘柄と考えられる。
優待は最低単元から付与されることが多く、保有株数が増加する程に手厚くなる銘柄も大きいが、殆どの場合上限が設定されている。
上限を超えて保有しても得られるものが限られてしまう為、機関投資家が多いと優待による株価下支え効果は薄くなってくる。
また、はじめから優待目的の個人投資家は、株価動向に関わらず保有し続ける場合が多い。
この層が多い程に実質的な浮動株は少なくなる。
つまり公表されている浮動株比率よりも実質は低くなり、需給はよりタイトな状態にあり、株価にはプラスに働く。
もっとも企業側もモノをいわない安定株主であり需給も引き締めてくれることを期待して優待を出すので、まさに狙い通りのケースだ。
今後こうした特性を強めてくる銘柄を狙っていきたい。
既にこの特性が強い銘柄でもいいが、せっかくなので個人株主が増加する局面での株価上昇に乗りたいので、強めてくる銘柄でより旨みをとりたい。
銘柄発掘はシンプルに、個人投資家増加を企図する銘柄を探したい。
そういった銘柄は個人投資家IRに熱心なことが多い。
個人投資家説明会を開催している会社などを狙いたい。
これらの中からまだ優待制度を実施していない企業をリストアップし、可能であれば説明会に出席して株主還元の説明を聞いてみるといい。
優待制度創設を検討していたり、質疑応答の際に多くの投資家からこれを求める声が挙がっていれば近い将来創設してくる可能性がある。
うまくハマる銘柄を発掘できた場合、
優待発表→買いが増加→その後優待のみ目的の個人投資家も徐々に増加→伴って実質的な浮動株比率低下需給タイト化→3月、9月等の権利確定月に買いが見込まれる→タイトな分株価上昇圧力が強くかかって高騰
というシナリオを想像している。
高配当利回り銘柄でも近い動きが想定されるが、優待銘柄のほうが売買しない投資家が多い分だけ需給がタイトで株価は上げやすく、売り物も計算できる。
手間はかかるが面白そうかと、、、ちょっと妄想し過ぎだろうか。。。
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