証券会社の個人営業スタイル。大損する理由

資産運用の心構え

資産運用の必要性は高まり続けていますが、挑戦してはみるものの失敗して辞めていく人が後を絶ちません。
定期預金とは違い元々ハードルが高いということもありますが、相談役として機能するはずの証券会社の機能不全にも原因があります。

資産運用が上手くいっていない人、都合のいい客になっているような気がしている人、証券会社への就職を考えている人の参考になればと思い、ありのままを紹介します。
実際に大手証券会社のリテール経験者複数にインタビューし、異口同音に返ってきた答えをまとめています。

証券会社リテール営業は販売ロボット量産型

全国全員一律で同じ商品を売り込む

「お客様に合った商品を提案する」というのが本来の姿であるはず。
そして、そんな風に見せています。

しかし、実態はほぼ全ての顧客に同じ商品を勧めています
同一の証券会社で取引している人がいれば保有商品を聞いてみるといいです。
支店が違ったとしても、驚くほど同じ商品を持っていると思います。

本社の企画部署で、○○ファンドを販売すると決めたら、全国全支店右ならえです。

本社で商品を決定したら、各地区の担当役員に指示がおり、そこから支店長へ、そしてあなたの担当の営業マンへ命令が下ります。

そしてこれは、営業マン、支店長、役員の間で競争を煽っています。
いかにいい提案をしたかではなく、いかに沢山販売したかですよ・・、素晴らしい提案ををした人は評価されず、ク〇ファンドでも売り込んだ人が評価されるのです。

アセットインフォリード作成

相場観は関係なし

「注力商品を販売しろ」という指令が下ると、それに向かって猪突猛進です。

相場見通しと逆行していても関係ありません。
というより、相場見通しが分かる人を探すほうが大変。勉強していない、新聞も読まない人もざらにいます。

若い頃は希望を持って入ってきた証券マンでも「相場観を持ってたら命令に背くことになりかねない」として、考えることを放棄するという人もいます。

一旦、本社部門である程度の相場想定はしていますが、刻一刻と変わる環境変化に合わせて、投資行動の修正をアドバイスしてくれることはありません。

支店営業マンは、上から降りてきたセールストークをひたすらオウム返し的に繰り返すのみです。
雨の日も風の日も、爆騰した日もショックが起きた日も関係ありません。

徹底した営業管理体制

本社は役員を監督役として置き、役員は支店長を見張り、支店長は課長、営業マンに画一的な行動を促す。

各人がマニュアルのように決められた行動を繰り返していくような現場になってしまっています。
会社としては、営業マンの能力に関わらず販売できる体制をつくることが効率的です。

組織としては、一部の優秀な人に頼るのはリスキーな面もあるので、誰でも従順に言うことを聞いていればできる状態というのは都合がいいです。工場みたいなものですね。
自分がその証券会社の株主であれば、それを求めるかもしれません。

本来顧客の利益とは反しますが、そこはコンプライアンス面の理屈付けやらアピールの仕方で手を打ってあります。

組織のジレンマとでもいいましょうか。悲しいところですね。

注力商品の解約は必ず止める

また、盲点ですが、解約を引き止める商品も指定されています。
注力商品については、運用成績や見通しに関わらず、解約は止めることとされます。
よくあるパターンではグループ会社の投信が多いですね。
会社全体で残高を溜めているので流出は悪とされます。

乗り換え提案の一方で、しつこく解約を止められる商品はこうした疑いを持ったほうがいいでしょう。

公募増資・IPO、公募債券は販売必達

公募増資やIPO、新発社債などの販売は必達です。

これらは発行企業を担当する投資銀行部門で引き受けたものです。
発行企業から大きな手数料(正確には株は大きく債券は小さい)を貰って引き受けた儲かる案件です。

リテールからすると自分達とは関係ない花形部署が取った仕事の後始末です。
(投資家に人気の案件なら売りやすくて喜びますが。)

これらの案件は、発行企業から証券会社が一旦買取り、それを投資家へ転売するという仕組みになっています。(会計上の理由でこうした形をとることが一般的)
即ち、証券会社からすると在庫です。買取再販の形態です。
売れ残ると自社が値動きのリスクを被る上、販売できなかったことが発行企業からのマイナス評価になります。

こうした理由があるので、役員は支店長を詰め、支店長は課長、営業マンを怒鳴り散らしてでも押し売りするという悲しきサラリーマンの図式になります。

投資信託には売却禁止期間がある

各証券会社内のルールで、投資信託は買付から半年や1年などの一定期間は売却してはいけないというルールがあります。
会社ごとにルールが異なりますが、コンプライアンスルールとして定められていることが多いです。

これも本来は顧客の柔軟な売買機会を奪うことになるのですが、それよりも営業マンの短期回転売買推奨を疑われることを恐れてルール化したものです。

このあたり詳しくは下記の記事で解説しています。
証券会社が投資信託を解約させてくれない!? 恐ろしい「短期損切り禁止」ルール

従順な販売ロボットが優秀な営業マンとされる

リテール営業は金融のプロを歓迎していない

販売ロボットであることが求められる環境において、知識と判断力を持ったプロを必要ではありません。
論理的に考えておかしな指示にも従って貰わねばなりません

レベルの高い知識や思考力を持っているほど、いいアイデアが出ますし、相場環境を加味した提案も可能になります。顧客にとってはこちらがいいのは言うまでもありません。

しかし、画一的な販売を行う現場においては必要ありません。
一般的な個人顧客相手であれば、わかってるフリが通用したり、親しみやすいキャラクターでなあなあにしたり・・・。

全顧客に画一的に注力商品を販売

上述から繰り返しになりますが、黙って頭よりも手足を動かすことが求められます。

命令に異論を持たず、機械のように粛々とこなしていく人が都合がいいです。
上げてきた数字が少ないともちろんダメですが、頭が良くて皆と違う手法が取れる人ではなく、何も考えなくていいから命令に従って販売マシーンになる人が上司にとっていい部下になってしまいます。

顧客との人間関係をつないで解約を食い止める

金融のプロは求められませんが、顧客との人間関係のメンテナンスはしばしば求められます。
どんなに高度な運用を行っても損はしますが、杜撰な販売は博打と変わりません。
顧客から感づかれることもよくあります。

解約したくなるのが当然ですが、ここを謎の人間関係でなんとか乗り切ろうとします。
会社側はこういった場面が来ることは想定済。
可愛がられるキャラクターや(一般的に男性より柔らかく感じる)女性が意外と多いのは、こうした事情もあるでしょう。

まともな証券マンは支店からは消えていく

金融のプロフェッショナルを志向する証券マンは支店からは遅かれ早かれ消えていきます。
販売のプロではなく、金融のプロを目指すのですから当然の流れです。

ビジネススキルや知識レベルの高い人材は本社専門部署へ異動していきます。
そこまでのレベルでなくとも、疑問を感じて転職していくケースも多いです。

また、一生懸命やっても販売できない人も脱落して辞めていきます。

結果として残るのは、従順なサラリーマン販売員ばかりになります。

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なぜ証券会社の営業はしつこいのか。
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