株を見るのに必要な指標、モノサシについて説明します。
本記事を見ている人は、ある程度株式投資の勉強をやっている人だと思います。
株の指標はなんとなく分かるけど、いまいち腹落ちしていない。
結局、どの指標をどう見たら良い株、悪い株を判断できるの?
このような疑問に、お答えします。
- 主な株の指標にはなにがあるのか
- どの指標を重点的に覚えておけばいいのか
- よく使う指標をどう使い分けて株を選別するのか
私は、金融マンとして10年以上株の世界におり、プロ投資家へのアドバイスも行ってきました。
ただ、駆け出しの頃、勉強を進めていく過程で同じような悩みに当たったことがあります。
早く指標をモノサシとして使えるよう、わかりやすく説明します。
目次
主な株式投資指標には何があるか
株式投資の指標は、大きく4つの系統に分かれます。
どれも株価と企業の持つ力を比べて、妥当かどうかを測るものですが、比べる対象が異なってきます。
企業の利益にフォーカスした指標
株価と企業の利益を比べる指標です。
- PER(株価収益率):株価÷一株当たり純利益
- EV/EBITDA倍率:企業価値÷EBITDA(減価償却・税引前利益)
株価が利益の何倍まで買われているかを測ります。
株主にとって、会社は利益を生み出してくれるものです。
株価が今年の利益、あるいは将来期待する利益と比べて、高いのか、安いのかのを測定するモノサシです。
利益と比べる指標は、基本的にPERとEV/EBITDA倍率の二つです。
PERは株式投資の指標で最もポピュラーで覚えておいて欲しい指標です。
(PERの詳細は次の章で説明します。)
EV/EBITDAは、株価だけでなく負債まで加味した企業の価値(EV)を利益(EBITDA)で割ったものです。
これは、見て頂いている皆さんのニーズから外れそうなので、細かい説明は避けます。
ニーズがありそうなら別記事で書こうと思います。
企業の資本にフォーカスした指標
株価と企業の資本を比べる指標です。
- PBR(株価純資産倍率):株価÷一株当たり純資産
- 自己資本比率:自己資本÷総資本
PBRは、株価が純資産の何倍まで買われているかを測ります。
純資産はいわば企業の自分のお金です。
いざとなったら会社を守ってくれるのは純資産、株価がその何倍まで買われているかで、加熱度合を測ります。
(PBRの詳細は次章で説明します。)
また、自己資本比率は、企業の資産全体のうち、自己資本がどのくらいの割合かを表します。
企業の資産は、銀行からの借入など他人資本と返済不要の自分(株主)のお金である自己資本で構成されています。
返さなくていい自己資本が多いほど、会社は守られている状態です。
簡単にいえば、潰れにくさを測るモノサシです。逆に全くお金を借りていなくても事業拡大が遅れてしまうので良くないです。バランスが大事です。
企業の収益性にフォーカスした指標
企業の収益性を見る指標です。
- ROE(自己資本利益率):一株当たり純利益÷自己資本
- ROA(総資本利益率):一株当たり純利益÷総資本
ROEは、株主のお金である自己資本に対して、どれだけ利益を出せているかを測る指標です。
まずは単純に、株主が預けたお金をより沢山増やしてくれる企業が優秀と言えます。
(ROEの詳細は、次章で説明します。)
ROAは、企業全体の資産に対して、どれだけ利益を出せているかを測る指標です。
ROEが株主のお金を基準にしたのに対して、ROAは企業全体のお金が基準です。
こちらも高いほうが、収益性に優れる企業といえます。
配当にフォーカスした指標
企業がどれくらい配当を出すかを測る指標です。
- 配当利回り:一株当たり配当金÷株価
- 配当性向:一株当たり配当金÷一株当たり純利益
配当利回りは、投資金額の何%の配当が得られるかを測る指標です。
預金や債券と同じで、いくら投資するといくら手元に入るか配当の割の良さを表します。
(ROEの詳細は、次章で説明します。)
配当性向は、企業が稼いだ利益に対して、どのくらいの割合を配当に回しているかを表す指標です。
企業の配当への姿勢が表れるのですが、たくさん出すほどお得かというと、それはまた別で株価が高ければ割がいいとは言えません。それを見るのは配当利回りのほうです。
見るべき株式投資指標は4つ。その使い方
前章で挙げた投資指標を全部覚えるのは中々大変です。
なので、よく使う指標を4つだけ覚えましょう。
これだけでも十分に戦えます。
細かい話しをすれば、上記で挙げた指標の他にも沢山の指標がありますが、その辺は損した時に色々と言い訳が必要な機関投資家に任せておきましょう。
PER(株価収益率)
PERは、株価が企業の利益の何倍にあたるかを指します。
例えば、ある銘柄の株価が1,000円で、一株当たり当期純利益100円だとすると、
1,000円÷100円=10倍
です。
この10倍という数字が高いのか、安いのかの判断軸になります。
PERの使い方
その銘柄のPERが、
- 株式市場全体と比べて高いか・低いか
- 同業種と比べて高いか・低いか
- ライバル企業と比べて高いか・低いか
を見てください。
株式市場全体であれば、東証1部全体(TOPIX)で大体15-17倍程度が平均ラインになりますので、まずこれと比べて高いか・低いか、業種平均と比べて高いか・低いか、ライバル企業3-5社と比べて高いか・低いかを見ます。
株価は、業種やビジネスモデル等で将来の成長期待が異なり、利益と比べてどこまで買い進められているかが分かれてきます。PERが業種やライバル企業よりも5倍、10倍高ければよほど理由がなければ割高ですし、逆にそれだけ低ければ割安といえます。
利益と比べて割高な株価な銘柄は避け、割安であれば買い出動を検討できます。
PBR(株価純資産倍率)
PBRは、株価が企業の純資産の何倍にあたるかを指します。
例えば、ある銘柄の株価が1,000円で、一株当たり純資産が1,000円だとすると、
1,000円÷1,000円=1倍
です。
PBRの場合は、1倍という数字が大きなポイントになります。
PBRの使い方
PBR1倍を分岐点として覚えてください。
PBR1倍ということは、株価と純資産すなわち株主の資産が等しいということです。
会社は、潰れたときに借金を返すと、あとには株主の資産が残ります。
株価が自分の資産と同じ価値はあると評価されている状態です。
PBR1倍を下回ると、株主の資産よりも株価が安くなっている状態。
極端な話し、今すぐ会社が潰れたとすると、持っている株券以上のお金がかえってきます。
PBR1倍以下は、解散価値を割れているとも言われます。
PBR1倍割れは、株価が割安な状態を表しているとも言えますし、ビジネスが上手くいっていない場合は、持っているお金ほどの価値もないということでもあります。
PBR1倍割れは株価が割安とも言えますが、株式市場から期待が乏しい会社とも言えます。
また、PERと同様に、株式市場全体と比べて高いか・低いか、同業種、ライバル企業と比べてどうかも見てください。
ROE(自己資本利益率)
ROEは、株主の資産である純資産を活用して、どれだけ利益を稼げるかを測ります。
例えば、ある銘柄の一株当たり純利益が100円、一株当たり自己資本が1,000円だとすると、
100円÷1,000円=10%
です。
極端にぶっとんだ数字を除いては、高い方が優秀と覚えてください。
ROEの使い方
ROEが高いほど、株価は高くなりやすいです。
ライバル企業よりも、PERやPBRが高い銘柄であってもROEも高いのであれば、それはそれで妥当な株価と判断することができます。
収益性が他社よりも秀でているのであれば、株価が高くなってもいいでしょう。
ROEは、意識する水準として8%を頭に入れておいてください。
ROEは、PBRと相性がよく(相関関係があり)、ROE8%を達成できていれば、PBR1倍以上が付きやすいです。
繰り返しですが、ROEが高い企業のほうが優秀です。
もう少し勉強したい人は、こちらでROEを詳しく説明しています。
ROE(株主資本利益率)とは。バフェットも重視する株主孝行指標の真意
また、ROEが高くても、ぶっとんだ数字に注意して欲しい理由は、こちらで説明しています。
ROEの問題点。三要素に分解してROEの質を確認。
配当利回り
配当利回りは、一株当たり配当金が株価の何%に当たるかを表します。
例えば、ある銘柄の一株当たり配当金が30円、株価が1,000円だとすると、
30円÷1,000円=3%
です。
1,000万円投資したとすると、配当金で30万円儲かります。
これは分かりやすいと思います。
配当利回りの使い方
配当狙いで株を選ぶ時に基準になります。
意識しておく水準は3%です。
3%以上あれば、高配当の部類に入ります。
配当狙いの投資をするときは配当利回り3%以上の銘柄をリストアップしましょう。
また、配当利回りの高さは、株価の下値リスク抑制にもなります。
配当利回りが高ければ、それを狙って買いが入りやすく、配当が株価下落にブレーキかけてくれます。
株式投資の指標まとめ
株式投資の指標は、マニアックになるほど沢山ありますが、よく使う指標として4つおさえておきましょう。ベーシックな指標を理解することで十分株式投資の舞台で戦えます。
- 利益にフォーカス:PER(株価収益率)
- 資本にフォーカス:PBR(株価純資産倍率)
- 収益性にフォーカス:ROE(自己資本利益率)
- 配当にフォーカス:配当利回り
株が上手くなって儲けるには、投資指標はもちろん、土台となる考え方を身に付けることが肝心です。
その為には、限られた良書をしっかり読むことです。
こちらの記事を参考に可能なものを読んでみましょう。
【株投資本 おすすめ 絶対的6冊+2冊】初心者から上級者まで。これぞ株式投資の教科書
また、こちらで株の勉強法を総まとめしていますので併せて読んでみてください。
株式投資の勉強はこれを繰り返せ。難しい方法論より基本のサイクル化
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